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本格ミステリマインドに溢れる小説だけど、人には薦めにくい

「いま売り出し中のミステリ作家って誰?」と訊かれると困る。しかしそれ以上に嬉しい。
何しろ候補がたくさんがいる。

このブログで何度か紹介した相沢沙呼は、すでに名声が確立した中堅作家だから外すとして、この10年くらいのうちにデビューした力量のある(※)作家だけでも、これだけいる。
名前の後ろは代表作です。

今村昌弘……『屍人荘の殺人』『魔眼の匣の殺人』

阿津川辰海……『星詠師の記憶』『透明人間は密室に潜む』

青崎有吾……『体育館の殺人』『ノッキンオン・ロックドドア』

長浦京……『リボルバー・リリー』『アンダードッグス』

早坂吝……『○○○○○○○○殺人事件』『誰も僕を裁けない』

澤村伊智……『予言の島』

高田大介……『まほり』

青柳碧人……『むかしむかしあるところに、死体がありました。』

五十嵐律人……『法廷遊戯』

斜線堂有紀……『死体埋め部の悔恨と青春』『楽園とは探偵の不在なり』

深木章子……『鬼畜の家』『衣更月家の一族』
ちなみに1947年生まれ。63歳でデビュー。

方丈貴恵……『時空旅行者の砂時計』

(※)もちろん俺調べ。よって漏れている人もたくさんいると思われ。

さて、今回ご紹介するのは白井智之
代表作は『人間の顔は食べづらい』『名探偵のはらわた』。
人間の顔は食べづらい

まあタイトルからわかるように、中身はグロい。とことんグロい。
だからリアルではなかなか勧められないし、話題にも出しづらい。
でもネットだからいいんだもーん、紹介しちゃうんだもーん。

最近の日本のミステリーでは、「特殊設定もの」と呼ばれる作風が流行している。論理性に重きを置いた本格ミステリーに、超能力や幽霊を導入した一群の作品だ。
上に書いた「売り出し作家」の代表作にも、そうした作品は多い。
そして白井智之はほぼすべての作品が、特殊設定だ。

この特殊設定を利用して、白井はグログロなミステリを書く。
というか、グログロなミステリが書きたいがために、それにあった特殊設定を使う。
で、そんなにグロいミステリが読みたいかと言えば、別に俺はグロい小説など読みたくない。
しかし白井のミステリは美しいのだ、ロジックが。

これほどゴリゴリにロジックを書くミステリ作家を、俺は知らない。
たとえば歌野晶午や法月綸太郎や有栖川有栖などはそれに近いが、彼らはなんだかんだ言ってこちらサイドの人間だ。
つまり現実に足をおろしている。

しかし白井智之は、どこに立脚しているかわからない。
何しろ必要なのはロジックだ。
それを美しく運ぶのに必要ならば、養殖人間が跋扈する世界でも、人面層が主体を奪う世界でも、過去の殺人鬼たちが地獄から蘇る世界でも何でもいい。

この清々しいほどにリアルを馬鹿にした作風が、白井智之の魅力の一つだ。

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ジャーナル・ギャップ

Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

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