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コンサルクロニクル5~エクヴォルトの今に生きる名言

(前回までのあらすじ)
校長の確認テスト否定と青チャート拘泥……様々な謎がいま解き明かされようとしている

その夜俺は教務部長と飲み屋の個室で密談をした。
そこで様々なことがわかった。前回冒頭の2つの疑問も氷解した。
まず「何故職員は校長の意向に従順なのか」。
校長のやり方に疑問を投げかけた職員は、こぞって理事会が丸め込んで他の学校に斡旋したのだという。
まあ、クビだな。いろいろな力関係でこうしたことは時々生じる。
だから今残っているのは、ほとんどがイエスマン。
そして「何故職員はコンサル(=俺たち)に不満を言ってこないのか」。
答えは、校長の思い付き改革は今に始まったことではないから。
だから今更俺たちに当たっても仕方がない。
それでも今までは面従腹背で流してきたけど、コンサルが入って次から次へと実現してしまって、面食らってはいるようだ。

俺「でさ、聞きたいのは、確認テストの件。あれ、やめたいのかな?」
教務部長「校長はやめたがっています。カリキュラムは遅れる、模試の結果は悪くなる、人件費はかさむで、いいことなんてないから」
俺「でも、わかっていたはずですよね、こうなるのは」
教務部長「……わかっていたでしょうね」
教務部長の歯切れの悪さが、俺にひとつの霊感を与えた。
俺「これ、あくまで想像ですが、もしかして校長のやりたいことって……」
教務部長がニヤリと笑って、俺の言葉の後を続けた。
教務部長「わかりましたか。そう、校長のやりたいことは「変えること」です。保護者や生徒の満足でも、落ちこぼれをなくすことでも、大学合格実績を増やすことでもないんです。ただ、変えること、それが彼の本心です」

これで得心した。
確認テストはすでに実現しているので、もはや校長にとってどうでもいいことなのだ。いや、実現したということは、なくさなければいけないもののひとつになったということだ。
教務部長の話を聞いて、今まで明らかになっていなかった様々な改革(および改革未遂)を知ることができた。
給食制度(失敗)、スクールバスから巡回バスへの転換(失敗)、ウルトラ特待制度(希望者ゼロ)、デザイナーズブランド制服(失敗)、ネット広告(失敗)、大学教授の招聘(失敗)、タレント講師(失敗)……
教務の改革についてはキリがないほど変えてるらしい。そもそも確認テストだって2年に1回ぐらいのペースでやってはやめてる。(うわあ、そんなの知らないで保護者メール出しちゃったよ)
そして青チャートだって早晩「こんなのやっても意味ないよ」と言って廃止するのだろう。

教務部長「あの人も理事会からプレッシャーがあって一生懸命なのでしょうが……。今日会議で、東大を5人でも10人でも出さなくちゃいけないって言ってたでしょ。あれが象徴的ですよ。うちのような学校が東大に5人出してごらんなさい。大変な騒ぎになりますよ。でもあの人は頑張れば来年でも再来年でも、それこそ5年後ぐらいには東大を5人ぐらい出せると思ってるんです」

4/19に「コンサルと学校の話をするつもりが、俺の苦難の話に」という投稿をして、その中で「「変化に対応できる人だけが生き残れる」というのはコンサルの常套句」と書いたが、この校長なんかはいいお客様だ。
自分から「変化しなくちゃ、変化しなくちゃ」とこちらサイドに飛び込んできてくれているのだから。
結果的に俺は様々なコンサル的実験をやらさせてもらった。しかし俺にとっては後味の悪い仕事となった。
校長は悪い人ではなかった。しかしその熱意が、結果的に多くの生徒、保護者、職員を傷つけてしまった。
また彼は悪い人ではなかったが、青チャートや東大合格者数の発言を見てもわかるように、底の浅い人間であった。
かつてナチス抵抗運動にも身を投じたドイツの軍人クルト・フォン・ハンマーシュタイン=エクヴォルトは、次のように言ったという。

将校には四つのタイプがある。利口、愚鈍、勤勉、怠慢である。多くの将校はそのうち二つを併せ持つ。
一つは利口で勤勉なタイプで、これは参謀将校にするべきだ。
次は愚鈍で怠慢なタイプで、これは軍人の9割にあてはまり、ルーチンワークに向いている。
利口で怠慢なタイプは高級指揮官に向いている。なぜなら確信と決断の際の図太さを持ち合わせているからだ。


そして最後のタイプについてはこう言った。

もっとも避けるべきは愚かで勤勉なタイプで、このような者にはいかなる責任ある立場も与えてはならない。

彼は校長になんてなるべきではなったのかもしれない。

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コメント

No title

その校長は、その勤勉さから、精力的に間違いを積み重ねてしまったのですね。怠惰であれば、「何もしなくてお金がもらえる方がいいや」と、何も手を付けなかったかも知れません。その方が、結果的には職員や生徒に混乱は少なかったかも知れません。皮肉な話ですけれど。
ジャーナル・ギャップさんのおっしゃる通り、こういう人物は、校長なんて責任ある立場に就いてはいけなかったのでしょう。

No title

「良くなるように変える」って難しいです。

綺麗事を言うと そういう時に「経営理念」とか「学校の方向性」が大事なんでしょうね。
この学校は何を目指す学校なのか、と言うことを理事会から校長、各先生まで共有するってことでしょう。

 なんつって 学校の理念や経営理念見たら
「変化を恐れず改革していき、日本一の学校を目指す」
「やって見て失敗は問題ではない。問題なのはやる前から失敗すると考えることだ」
「現状に満足せず常に上を目指し、進学実績を上げていく」

 みたいなことが書いてあったりして・・・
 ふふふ

件の校長先生と学校にとって唯一幸運だったことは、依頼したコンサルさんが有能かつ良心的であったことだろうな。

もう一つ幸運だったのは、冷静で話がわかる忍耐強い教務部長がいたこと。(少々気の毒ではあるが)

この校長先生も現場の教育者としては見るべき資質もあったのかもしれない。

‥JGロングさん、お疲れ様でした。

エクヴォルトの指摘するタイプを当てはめると、自分は間違いなく「愚鈍で怠惰」。
子どもはどうやら「利口で怠惰」が最も近い。
うーん、でも親子そろって怠惰って‥

おっと、怠惰ではなく怠慢でした。
ま、あまり変わらないか。

へえ、ジャナ天さんも大変だったんですね。てっきり喪服のマダムと毎日酒盛りでもしてるのかと思ってましたよ。
ジャナ天さんが出してくれた四分類、みんな自分は「利口で怠慢」って思いたがるんだけど、実際はほとんど「愚鈍で怠慢」なんですよね。怠慢は自覚しても、愚鈍は中々自覚しないから。

Re: タイトルなし

> へえ、ジャナ天さんも大変だったんですね。てっきり喪服のマダムと毎日酒盛りでもしてるのかと思ってましたよ。

あんな呑み方を続けてたら死んじゃう。俺死んじゃう。

No title

>そう、校長のやりたいことは「変えること」です。

昨今の大学入試改革は、お役人(政治家?)の何かを「変えたい」という願望を実現しただけなんじゃないかな~
変えて何かが良くなるとも思えんしな~

東大とか、英語の業者テストは使わない、とか明言しちゃったしね~
どーなるんだろーか。

大学入試って話だと、一番変えてない東大が、相対的には一番成功してる感じ。
中高でも、都内の伝統別学校や、栄光とかは変えてないけど引き続き人気ですよね。
変えてないから人気なのか、人気だから変えなくていいのか、どっちか分かんないけど。

No title

「東京大学は27日、2020年度から始まる大学入学共通テストの英語で導入される民間資格・検定試験を、合否判定に使うことを明らかにした。福田裕穂副学長は3月の記者会見で「高校の授業が民間試験対策になる恐れがある」などとして合否判定に使わない方針を表明しており、事実上の方針転換となる。(毎日新聞)」

 東大もブレブレ ですね・・・

すでに超高齢社会に突入し、今の子どもたちが老年期に差し掛かる頃には超超?高齢社会になると言われている現在のこの状況は、戦後の学制改革並みに大胆な改革をしなければならないステージなのかもしれない。

本気で変えるなら、大学入試という出口近くを変えるのではなく、すべての子どもが関わる可能性が高い入口である初等教育から中等教育の学制を変えた方がいいのでは?と思う。
まあ、出口を変えると、入口も変わるということかもしれないけど。

あるいは、15歳未満の子どもより犬猫さんの数の方が多い、と言われてるくらいなのだから、もう少し子どもたちへの教育に手厚い支出をしてもいいのになーとも思う。

現在の大学入試改革は、何か中途半端ですよね。

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ジャーナル・ギャップ

Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

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