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アカデミズム人、就職を気にする

竹内洋と佐藤優の共著『大学の問題 問題の大学』(2019年 時事通信社)は大変面白い本である。
幾つも蒙を啓かれた箇所があり、何度も読み返した。

と、俺に似合わず誉め言葉から始めましたが、もちろん光あるところに闇あり、誉めあるところに貶しあり。
誉めるところはいずれ大々的にやるとして、今回はすこし引っ掛かったところをやってみようと思います。

ラスプーチン
※佐藤優氏といえば外務省のラスプーチン。でも容貌は、本物とはあまり似ていないな。

この本は竹内洋と佐藤優の対談で進んでいく。
その中で佐藤優が、いま自分が教鞭をとっている同志社大学神学部を例に出して、「大学で伸びる学生」の話をする。
これが「引っ掛かった話」なのだ。
ちょっと長くなりますが引用します。

佐藤 (前略)むしろ伸びるのは超高偏差値ではないけれども、偏差値60台の上ぐらいの高偏差値高校を出た学生です。
しかも第1志望で神学部に来る学生。これはものすごく伸びる。
今一番伸びる学生がいるので、その学生に聞いてみたんです。
「何でうちに来たの、クリスチャンホームの出身でもないのに」と。
その学生が言うには、学問で極めたいという分野が高校時代に見つからなかった。
就職がいい法学部に入って、いい会社に就職したいという気持ちもなくて、そもそも自分が何を勉強すればいいのか、何に適性があるか分からなかった。
その時に、必修科目が2単位で、あとは全部自由に取れる神学部があることを知ったと。
そこで、高校の先生に「神学部に行きたい」と言ったら、その先生が「そんなところに行って就職は大丈夫か」と心配した。
でも、その学生の父親が、「大学は就職予備校ではないから、やりたいことをやればいい」と言ったというんです。
立派な父親だと思います。
そういう動機で学びたいと思って来た学生は、結果として一番いいところに就職していくと思っています。


この話で俺が引っ掛かったのは、学生への評価には「いいところに就職できるかどうか」がつきまとうんだな、ということだ。
この学生がまだ学生であるから、どこに就職するかはわからない。
しかし「今一番伸びる学生」であり、「そういう動機で学びたいと思って来た学生」なのだから、きっと成功するに違いない。
その成功が「一番いいところに就職」なのだと、佐藤氏は言っている。

これが他の人なら何でもない話だが、佐藤優は徹底したアカデミズム人である。
そのアカデミズム人が、「これだけ伸びているんだから、彼は知識人としてどこでもやっていけるだろう」ではなく「一番いいところに就職できるだろう」とはね。

しかしまあ、佐藤優を揶揄しようと言う気持ちは、あまりない。
というのも、大学の教員というのは(特に教育に力を入れている教員は)、教え子の就職がやはり気になるものらしい。
友人の大学教授も最近は、「このコロナで学生の就活が大変だよ」と言っている。

縁遠い時は理想論を語れるが、当事者になるとそうも言ってられない、ということか。

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コメント

No title

以前も書いたが、15年くらい前だったか?

 純粋生物学の研究を取材に行ったことがあった。超高インパクトファクター雑誌の表紙を飾った、とても素晴らしい研究だ。

 そしたら、取材後、教授に「就職の相談に乗ってもらえませんか」と言われた。超有名雑誌の表紙を飾るような素晴らしい実験をした博士課程の学生が、就職がない、というのだ。

 ええええ?

 しかしなあ、オラの業界はそんな優秀な人間の来る場所ではない。なんというか・・・ 社会不適合のモラトリアム人間の集まりみたいな業界なのだ。

 というわけで業界の実情をできるだけ正確に学生に話した。

 理系、と言っても電子系、AI系、合成化学系など応用系は就職がいいが、純粋学問系はどうしても就職は不利だ。 研究職のポストもない。

博士課程に進もうとすると、「実家は金持ちか?」と聞かれるという話もある。理系の博士課程も芸術系と大差ないのだ。

 こんな日本の仕組みは、やっぱりおかしいとオラは思うけどニャ。 研究職のポストの数プラスアルファに 博士課程の数を絞るべきではないだろうか。

No title

 そういえば スイスのCERNで修士論文を書いた学生から就職の相談をされたこともあった。

 オラの仕事がそんなに「専門的」に見えるかニャ?
 確かに取材に行くときは「専門的」だし、そんな仕事はオラも楽しい。 しかしそれ以外の仕事は地味で専門性もなく「雪かき」である。(※)

 優秀な人がオラの仕事をしたら、「なんで私がこんな仕事しなくちゃいけないんですか?」と言って辞めて行くと思う。(現実にそういう若い子もいた)

 なんだろう。。  仕事って誰かが与えてくれる場合もあるが、世の中そんなに甘くない。 「自分の専門性を生かせる」仕事、「楽しい」仕事を 「苦労して」「死ぬ気で」とってくるのである。

 さて、今月は企画月間だ。
 今月中に5本くらい企画を書かなければならない。通れば、「楽しい」仕事だが、それまでは「辛い」仕事だ。  家から一歩も出ずに(たまに気分転換で図書館行くが) 調べ物、原稿書き、企画作成、デザイナーとネット打ち合わせだ。

 進まないときは、1日 1ページも進まない時もある。 「あーゴルフでも行くんだった」ととても後悔する。
 とにかく1ページ。いや、1行でいいから前に進むのだ。 必死にもがいて前に進んで行くと「神が降りてくる」(いいアイデアが浮かぶ)時もある。

 というわけで3連休もずっと仕事だ。8月は会社に行かないかもしれない。

※雪かき・・・村上春樹の小説に出てくる。誰かがやらなければならない仕事で特別自分でなくてもできる仕事のことだ。

仕事の神髄

>とにかく1ページ。いや、1行でいいから前に進むのだ。 必死にもがいて前に進んで行くと「神が降りてくる」(いいアイデアが浮かぶ)時もある。


これが仕事の神髄ですね。
もがかないとどうにもならない。もがいてもどうにもならないけど、もがかないと、やっぱりどうにもならない。

No title

最近、一つ学習した。

「今日は、ここまで頑張って終わらせる」
これはいい。 いいのだが、100%終わらせずに、最後の、簡単な作業をわざと翌日に残しておくのだ。

 翌日、その簡単な作業から始めると「すっと」仕事モードに入れるのだ。  

(と言いつつ、こんなどーでもええことを書いて仕事に集中していないのだが)

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ジャーナル・ギャップ

Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

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