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青春と死~そんな馬鹿なことがあってたまるか

以前「塾の思い出~男の首筋に伸びる指」(2020/02/24)という記事を書いた際に、Sという合コンプロデューサーと、高校時代の合コンの話を書いた。
今回はその続きの話です。
但しタイトルに「青春」なんて言葉を使っているように(さらに「死」なんて言葉も使っている!)、今回は長編。

さて、高校生の頃の合コンだから、男女各4、5人ぐらいで、ファストフードや喫茶店でお喋りするぐらいが関の山。たまにはお出かけもした。
ただ、中には仲良くなってカップルになる奴らもいた。
しかし恋人をつかまえようというワケではなく、あくまで仲良くあっちへ行ったりこっちへ来たり、お喋りしたりふざけあったり。

メンツも毎回変わった。俺も呼ばれたり呼ばれなかったり、都合がついたりつかなかったり。
そんな中で、時折見かける女の子がいた。名前を仮にWとしておこう。
Wさんはハキハキしていて、よく目を丸くして驚いたり怒ったり笑ったりする女の子だった。
ひとことで言えば、表情が豊かだったんだな。

青春

高3の夏休みに入る直前、俺は塾でSからWさんの意外な話を聞くことになる。
S「Wさん、最近見かけてないだろ?」
俺「ああ、そういえば、全然見てない」
S「病気になって入院してるんだよ」
俺「え?病気なんて無縁な感じがしたがなあ」
S「なあ、ホントに。で、さ、俺、あしたお見舞いに行こうと思うんだけど、お前も行く?」


行かない理由なんてない。
俺たちは次の日、病院の最寄り駅で落ち合って、花と菓子を買ってバスに揺られて入院先を訪れた。
Wさんは俺たちを見て少し驚いたようだった。
「やだなあ、こんなカッコ見られたくないよ」
「いやいや、カワイイ、カワイイ」
それから俺たちは大学受験の話や合コン仲間の話をした。
「私はずいぶんと出遅れちゃったから、受験は一浪かな」
「青学志望でしょ?」
「うーん、高望みし過ぎた」
「一浪するなら余裕でしょ。現役でも可能性高いんじゃない?」

30分近く話して、それから帰った。
帰りのバスの中では、俺もSもあまり喋らなかった。
頬がこけ、枝のように細くなったWさんの腕にショックを受けていたからだ。

冬の声を聞く前に、Wさんが亡くなったとSから聞いた。
俺「……ちょっと信じられない。病名は?」
S「俺も知らない」
ところがその日の日記には、俺はWさんのことを何も書いていない。

高校を卒業すると、Sとは音信が途絶えた。
お互い別々の大学に進学したので、まあ自然な成り行きと言えば自然な成り行きだ。
そしてそれが、俺の薄ぼんやりした欺瞞を助長することになる。

Sと会わないことをいいことに、俺はWさんの死を刻印するわけでもなく、忘れるでもなく、「そんなことがあったのだろうか」と宙ぶらりんにしてしまったのだ。
いや、日記に何も書かなかったことからして、この犯罪的な行為はすでに死を聞いたときから実行されていたのだろう。

**********

Sとの再会は突然だった。
大学の友人の結婚式に出席すると、そこにSがいたのだ。
Sは俺の大学の友人と同じ会社で働いているとのこと。世界は狭い。

2次会で俺はSと昔話に花を咲かせた。
そこで思い切ってWさんのことを聞いた。
「あのさ、Wさんのこと……」
「ああ、」
Sはしばらく絶句した後で、「死んじゃったんだよな」

俺たちはその後、めそめそと泣き始めた。結婚式の2次会の片隅で男が二人、静かに泣いているのである。
控えめに言って、異様だ。

俺「俺は、Wさんの死を、ちゃんと受け止められなかったのだ、ずっと、ずっと、今まで」
S「俺だってそうだ。しかしな、それは、あの子が死ぬなんて、そんな馬鹿なことがあってたまるか、そういう抗議だ」
俺「誰に抗議するんだ?」
S「知らん」

さんざん泣いた後で、俺はやっと人心地ついた。涙というのは偉大だ。
翌週俺たちは示し合わせて、Wさんの家を訪ね、線香をあげた。
事前に連絡を入れたとはいえ、娘の死から10年以上も経ったあとに、二人の男が訪ねてきたのだから、両親の心中はいかに。

結局1時間もあの頃の話をして、家を辞した。
Wさんには好きな人がいたようだったが、親にもわからなかったようだ。
目の前にいるこの二人のいずれかか、と怪しんでいたようだったが、さあて、それはどうかな。

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ジャーナル・ギャップ

Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

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