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数学のセンスを脳に刻み付けろ~栄光学園の井本の数学

先日NHKの「プロフェッショナル」という番組を見た。
栄光学園の井本先生が出るというで見てみることにしたのだが、これは見て正解だった。
あの番組を見て、というより、井本先生の数学の授業を見て、これが「教育を選ぶ」ということなんだと、痛感した。

授業の中身は、方眼紙に一筆書きの直線でエリア分けをしたときの法則性について、というもの。
生徒たちにばんばんエリア分けさせ、がんがん法則性を出させていく。

ひとつの法則が生まれたら、それの反証を上げさせる。
反証によって崩れたら、次の法則性をワイワイガヤガヤと見つけ出させる。

ひとりで黙々と作業するやつもいれば、4、5人でチームになって意見を出し合っている奴らもいる。
誰かが法則を導いたら、それをこすっからくひっくり返そうと、虎視眈々と狙っている奴もいる。

これが「ザ・男子校の数学」であろう。いや、それじゃあ性差別になるか。それじゃあ、こう言い換えよう。
これが「ザ・数学好きな奴らの数学」だ。
いや、これでも核心をついていないな。

というのも、いかに栄光学園と言えども、クラス全員が「数学好き」なわけはない。数学が嫌いな奴だっている。
しかし井本の授業は、数学が嫌いな奴だって笑いながら参加する。
反証を挙げるのは数学嫌いだってできる。へんちくりんな発想力や実行力があれば、ひっくり返せる。
それに数学好きな友達と一緒のチームにいるだけで楽しい。

じゃあ、この数学の授業を何と言って形容したらいいのか。
ああ、いい言葉があった。
「ザ・数学」。これが数学の授業という奴だ。

時間が来ても法則が出てこないこともある、と井本は言う。でもそれでいいのだ、と。
優秀な連中の頭と指を動かさせる。
とにかく数学を体に覚え込ませる。何千年前から脈々と受け継がれている数学という学問のセンスを、脳に刻み付ける。

そんなの栄光だからできるんだよ、と人は言うだろう。
そうだ、その通りだ。
このスリリングな授業は、受け取る人間を選ぶ。そのために入学試験がある。
だからこそ、「教育を選ぶ」という悦びがそこに生まれる。

数学に限らずこうした授業は、麻布にも武蔵にも開成にも海城にもある。
「趣味的な授業で大学受験に役立たない」と言うなら、そもそも選ばなければいい。
公式を憶えたり、パターン学習なんかは、塾や予備校に任せればいい。
何度か書いているが、中学受験の本質は「自分の子供の教育をデザインするために学校を選ぶ」ことだと思う。

そして「自分は子供にどんな教育を受けさせようとしているのか」という問いを発することが、中学受験の第一歩である。

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コメント

後輩、羨ましいぞ

難解でも考えることがとにかく楽しそうで。
生徒さんとそのご家族は入試までに力をつけて、これを日常にしたのですから幸せだなぁと思いながらオンエアを見ていました。

うまく答えが導けなくても、その子を誰一人否定しませんでしたね。先生も、周りの生徒も。
「そういう考えもある」「そこはこうしたらよくない?」と次々意見が出てくる。
先生ご自身も中学生のように試行錯誤していらした。

>そして「自分は子供にどんな教育を受けさせようとしているのか」という問いを発することが、中学受験の第一歩である。

これなくして学校を選ぶことはできません。
この栄光の授業を「自分の子どものレベルと違うから」「通学エリアでないから」と片付けるのはちょっと違うような。私立を選ぶとはどういうことか、考えるいい例ですから。
「最低でも○○大に行ってくれれば」それだけでは中学受験をした意味はあまりないのではないかと思います。

ワンダーランド

ああ、濱鈴さんも見ましたか。

俺ね、あの映像の中で一番羨ましかったのは、井本氏が放課後やっている塾での授業でのこと。
NHKもその映像の前にコメントを入れてたけど、生徒のひとりが井本氏が用意していた解答に対する反証をあげて、ひっくり返しちゃったんだ。

慌てて井本先生解き直し始めたら、生徒も何人か我先に証明し直して。
あの瞬間、反証を出した生徒、嬉しかったろうなあ。
やったぜ!先生をぎゃふんと言わせてやったぜ!

でもね、一番嬉しいというか楽しがってたのは、井本先生だと思う。
こんなの、教師冥利に尽きるでしょ。
あの場にいた全員が、数学というワンダーランドを共有できてたんだ。
羨ましいな。

No title

こういう授業を受けることができる、というのは羨ましい限りです。

 予備校とか塾では 「ドラマチックな解法」とかは学べる。(オラも塾講師の頃は そういう「感動的な」「エレガントな解法」を 選んで出題し、生徒に解かしていた・・・)

 エレガントな解法、ドラマチックな解法・・
 でも、それは所詮 「遊び」なんですよね。

 本当に必要なのは 「何もない白紙に数学という地図を書く力を身につけること」 

 いいなあ。 
 
※そういうことが許されるのは「トップ校」でだけである。 2番手校や3番手校が いくら「数学の本質に迫る授業」とアピールしても、保護者に「まずは 進学実績を上げて欲しいんですけど」と言われるだろう・・

No title

昨年夏は エデュに「F」さんというスーパースターがいた。 Fさんの(栄光を中心とした)エリート論は面白かったニャン。 Fさん 元気かな。

 またエリート論聞かせてくれんかな

Fさんの投稿は面白かったですよね。
私はFさんの前身(別HN)である「中等教育へ何を求めるか」さんのファンでした。
いまでも某掲示板に彼女のいくつかの投稿が残っていますが、改めて読み直しても、その筆力に感銘を受けます。
ああいう文章が書けるようになりたいと羨望しています。

♪ 井本のぉ〜 井本のぉ〜 す〜う〜 がく〜
♪ でも校長の名前は 望月さん ♪

つけ麺さんへ

つけ麺さんは相変わらず上手いなあ、こういうの。

No title

市川中のHPで新連載?が始まった。

2020年5月2日
【新連載】「Math Story ~数学のコラム~」
第一話 abc予想について

 というものだ。

 お、面白い。と思って第二話を期待しているのであるが、さっぱり更新されない。 コロナ休校対策?だと思われるので、5月中に 10話くらい進むと思って楽しみにしているのだが・・


 さて、コラムというのは存外難しい。
 オラもとある小さいメディアの依頼でコラムを連載したことがある。(!)  まあ、旅の恥は書き捨てってやつだ。(意味不明)

 気象にまつわるコラムを連載した。

 最初の頃はいい。 あれも書きたい、これも書きたい、とネタがある。が、段々ネタがなくなる。 専門的なことを書くと編集者から「わかりにくいです。もっと一般的に」と言われる。要するに「つまらない」ということだ。

 行き詰まってくると締め切りが怖くなる。一晩中うんうん唸っても書けなくなる。のだ。

 で、学んだこと

1)一般人は意外と「知らない」
 こんな当たり前のことはネタにならない、ということはない。 ネタは当たり前でもいい。ただちょっと料理は必要

2)始める時点で 少なくとも8割は埋められる自信がなければ連載なんぞ絶対にしてはいけない

 ほほほ

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ジャーナル・ギャップ

Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

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