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ロジカル・ミステリー・ツアー3~それってよく聞くけど本当かな?

本日はロジックというものの危うさに関してのお話。
そもそもロジックとはA=B、B=C、ゆえにA=Cというシンプルなものが初歩の初歩。

これをいろいろな形に変形して話を簡単にしたりあえて複雑にしたり、全く違うものを近づけたりあえて遠くに見えるようにしたりするもの。
具体的には「ロンリのちから」(NHK・ Eテレ)を参考にするのが一番楽しい。

論理のやっかいなところは「正しい論理」というのはおおよそつまらなく、「間違った論理」がなかなかに楽しい、というところだ。
かくして「間違った論理」のほうが流通する羽目になる。

但し「間違った論理」というのは、実は指摘されるまで間違っているとはわからないものもある。
これは論理が複雑だから、というわけではなく、安易に常識に寄りかかっていたりすることが原因だったりする。

具体例を紐解こう。
これはかつて俺が某教育風掲示板で実際目撃した、というより、一緒になって遊んだ実例である。

1.途上国では、いかに頭が良くても、英語ができないと教育が受けられないし(中等教育から英語ですから)、英語ができないと偉くなれません。
2.日本もそういう時代になりつつあるから、今、英語やグローバル教育、海外大学への進学が流行している、というわけです。

この文章は1と2が論理的に結びついていない。
「日本もそういう時代になりつつある」とあるが、それは1の文章にある「いかに頭が良くても、英語ができないと教育が受けられないし、英語ができないと偉くなれません」という時代なのか。
そういう時代になりつつあるのか、日本は?
そんな時代はまだまだ来そうもないようだが。

また「2」の文にある「海外大学への進学が流行している」というのは本当か?
ということで、次のような資料を引っ張り出してみた。

年度 留学生
2001 78,151人
2002 79,455人
2003 74,551人
2004 82,945人
2005 80,023人
2006 76,492人
2007 75,156人
2008 66,833人
2009 59,923人
2010 58,060人
2011 57,501人
2012 60,138人
2013 55,946人
2014 54,912人
2015 54,676人
2016 55,969人
文部科学省「外国人留学生在籍状況調査」及び「日本人の海外留学者数」等について
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/__icsFiles/afieldfile/2019/01/18/1412692_1.pdf

文科省の2019年調査によると(2013年以前と以降では調査方法が異なってるので純粋な比較はできないが)、2004年を頂点としてどんどん海外留学生は減っている。そして2013年から2016年までは横ばい。
とても「海外大学への進学が流行している」という状況とは言えない。

さらに言えば、増えている国は非英語圏が多いことから、「英語ができないと偉くなれないから海外へ進学する」という結論は怪しくなる。
まったく隙だらけのロジックである。


もう一つ、おかしなロジックをご紹介しよう。

A.今、これだけ英語英語と言われ、グローバルが流行になっているのは、それなりの理由があるはずなんです。
B.日本の国際的地位が急速に下がっている、ということですよね。
C.だから英語できないと誰も相手してくれません。


これはね、適当な箇所から各々の文章を持ってきたんじゃあないんです。3つの連続した文章です。
Aは、まあいい。ところがBはいきなりで、論理が破綻しているというか、国語が破綻している。
そしてCになだれ込むわけだが、結局Cが言いたいのは明らかで、その道筋への強引さが際立っている。

ちなみにCの文章を音読すると、助詞がいい感じに抜けていて、俺がたまに行く中国パブの女の子みたいになる。
でもその子はなかなか人気が高い。
日本語があまりできなくてもみんなが相手にしてくれる好例である。

常識に寄り添うのは大いに結構だが、寄りかかり方を間違えると悲惨だ。
また、常識というのは時々疑ってあげるといい。
思考力をアップデートするのに最も近道なのは、「それってよく聞くけど本当かな?」と調べることである。
調べれば調べるほど調査能力は上がり、知識も増える。増えた知識は今までの知識と結びつき、新たな考え方が生まれてくることもある。

他人をむやみに疑うのはその人の人間性を低くするが、常識は疑われても文句は言わない。

<参考記事>
ロジカル・ミステリー・ツアー1~小学生から塾に行っていたら東大には入れない?」(2019/10/12)
ロジカル・ミステリー・ツアー2~元ネタを確認しろ!話はそれからだ」(2019/10/13)

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コメント

レトリック講座

> 1.途上国では、いかに頭が良くても、英語ができないと教育が受けられないし(中等教育から英語ですから)、英語ができないと偉くなれません。
> 2.日本もそういう時代になりつつあるから、今、英語やグローバル教育、海外大学への進学が流行している、というわけです。

こういう論理的でない、しかも事実に基づかない主張であっても、少し工夫をすれば騙される人の数を増やすことが出来ます。例えばこんな風に。

1-2 今は先進国とみなされている日本も、長年に亘る経済の低迷で、遂にGDPは中国に抜かれ、かつて2位であった1人当りGDPでも26位に転落しています。このまま行けば、日本はいずれ途上国の仲間入りをしてしまうのではないでしょうか。

1-3 東京大学の国際ランキングも低下を続けています。その原因は国際化の遅れです。日本は自国の言語で高度な教育、研究が完結出来る珍しい国でしたが、研究論文は圧倒的に英語であり、今後は日本でも英語教育の更なる強化や英語での発信力が不可欠でしょう。

そして、「海外大学への進学」の部分には、開成のトップ層の生徒の海外大学進学の事例を紹介します。全体の数が減っているじゃないか、というロングさんの主張に対しては、「全体の数が減っているのは経済が停滞しているから。私は質に着目している。開成の例は、真に優秀な人材ほど正しい危機意識を持っていることを表わしている。」と反論。

これくらいやると、少しは騙される人が増えそうな気がしますが、そもろも「グローバル」=「英語」という点が完全に誤りなのです。たとえばビジネスをグローバルに展開するには、商品やサービスの質こそが重要であり、最近ではテクノロジーが主となっています。販売網を拡げる上で多言語対応は必要ですが、多言語対応は当然ながら英語だけで解決はしませんし、言語対応は専門業者に任せれば済みます。これも今後はAI翻訳の普及で劇的に安価になります。

ついでに、一部の優秀な高校生が米国のトップ大学を選ぶのは、英語を勉強するためではありません(インタビューでそんな事を言ったら一発で終了です)。日本の大規模大学にありがちな一方通行の座学の講義に飽き足らず、世界中から集まる優秀な教員、優秀で意欲的な学生との議論を通じた知の研鑽を求めに行くのです。

陸宿借さんへ

記事にある議論の相手が陸宿借さんだったら、とてもからかったり遊んだりなんて余裕はなかったな。

しかしもしそうだったら、もっと面白い方向に議論は進んだ気がする。
何しろこの議論の行く末は、言い負かされた相手が「お前が部下なら容赦なく切っている!」なんて言い出す始末。

いやはや、「お前が部下なら」って…

JGさんや陸宿借さんと論理の土俵で戦うには相当の覚悟が必要。私はユーモアで逃げます(それが奏功するかどうかはさておき)。

私は仕事がら、契約書や裁判所に出す訴訟書面など、論理の運びに細心の注意を払わねばならない書面を作成することが少なくないですが、
まずはじめに身につけなければならないのは、論理の運びに沿って(「よって」や「しかし」などの論理接続詞を適切に用い)、過不足なく(結論を導くための要素は漏らさず)、誤読される余地のない(複数の解釈が可能になるような曖昧な表現を残さず)文章を書く力です。

そのような力を身につけた後に、「騙し」のテクニックを身につけていきます。
論理的には「A→B→C→D」という流れを踏むべきところ、Cという事実が認められない(ないし、Cという事実を認めるにたる証拠が不足または欠けている)ときに、「A→B→D」と書いて、それがあたかも論理的な流れであるかのように表現する力です。
二重否定や受動態などのレトリックや、数学で学ぶ「裏」や「逆」を用いたりして、論理の欠損を文章で埋め合わせるわけです。
まあ、気付く人にはバレてしまいますけれども。

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Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

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