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『獄門島』(横溝正史1948年)~金田一耕助、フラれる

日本の推理小説のランキングを行うと、だいたい上位に『獄門島』(横溝正史1948年)が入ってくる。というか、大規模であれば大規模であるほど、1位は『獄門島』のものだ。

で、本日は『獄門島』の話をしますが、ストーリーには触れません。
「きちがいじゃがしかたがない」という了然和尚の台詞の真相の話もしませんし、歩く釣り鐘の謎の解明もしません。
1977年の市川崑の映画『獄門島』(石坂浩二主演)において、シャア・アズナブルが小坊主役で出ていることも、今回は無視です。

じゃあ何の話かと言えば、ラストシーン(エピローグ)での金田一耕助(名探偵!)と鬼頭早苗(ヒロイン)のやり取りの話である。
その個所を引用します。

昨日耕助は早苗さんにむかって、東京に出る気はないかと誘うてみた。この唐突な申し出に、早苗さんはびっくりして、つぶらな目をみはったが、やがてそのことばのうらにある意味をくみとると、しだいに目を伏せ、そしてつぶやくようにこんなことをいった。
「いいえ、あたしはやっぱりここに残ります。(中略)島で生まれたものは島で死ぬ。それがさだめられた掟なのです。でも……ありがとうございました。もうこれきりお眼にかかりません」


やーい!フラれてやんの、金田一!

いやいや、金田一耕助を煽るのが目的ではないので自重自重。
ここで言いたいのは、これほどあからさまに金田一の恋の告白が書かれているにもかかわらず、『獄門島』を初めて読んだ15歳の俺はまったく気がつかなかったんです。
後で人に言われて、「え?そんなシーンあったっけ?」

当時の日記を読み返すと、俺自身ちょっとしたラブ・アフェアの渦中にいたので、他人の淡い恋のことなど眼中に入らなかったのか。
それとも犯人も犯行方法も動機も白日の下に晒された後なので、適当に読み飛ばしたのか。
いずれにしろ、15歳の俺、フィクションだろうとノンフィクションだろうと、もっと人間を観察しろよ。
ホームズ先生もワトソンにそう言ってるぜ。

"'You see, but you do not observe. The distinction is clear.'
「君は見ている、でも観察していない。その違いは明らかだ」
(『ボヘミアの醜聞』より)

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コメント

俺なら解決なんてほったらかしてつれだします

ちなみに映画『獄門島』(1977年市川崑)では、早苗(大原麗子)の方から金田一(石坂浩二)に、「つれだして欲しい…」とモーションかけています。

すぐ「冗談です」と付け加えますが。

No title

ボヘミアの醜聞を、久しぶりにWikiであらすじを確かめました。
スキャンダル、という単語を初めて真面目に理解しようとしたのは、高校1年のとき、英語塾で、ボヘミアの醜聞を読んだ時のことでした。
なんとなくそんなことを思い出しました。

今はない王国

俺はむしろ「ボヘミア」というのに惹かれて、中学校の先生にどこにある国かと訊いたよ。
帝国書院の地図帳を出して、今はないけどこの辺りにあった国だと教えてもらった。
「今はないけど」というのが、心に響いたねえ。

それにしても高校の時に授業でホームズの原書をやるなんて、洒落てるなあ。

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ジャーナル・ギャップ

Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

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