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遺伝が何割と言われても
こと学力に関しては、インプットがゼロならアウトプットもゼロですから、点数に占める遺伝のポーションとか、1階2階理論のようなスタート地点の違いとかを唱えるのは、どうもしっくり来ません。
学力における遺伝の影響とは、同じアウトプットを出すのに必要なインプット量の違い、ではないかと思いますけどね。単純化すれば、理解力と記憶力。
なので、「遺伝が何割」という言葉を聞くと、一体どういう定義で遺伝の寄与度を測ったのか私には分かりません。そもそも遺伝によって受け継がれた理解力と記憶力を個人毎に定量化しないと、寄与度の計算自体出来ないと思うのですが。
学力における遺伝の影響とは、同じアウトプットを出すのに必要なインプット量の違い、ではないかと思いますけどね。単純化すれば、理解力と記憶力。
なので、「遺伝が何割」という言葉を聞くと、一体どういう定義で遺伝の寄与度を測ったのか私には分かりません。そもそも遺伝によって受け継がれた理解力と記憶力を個人毎に定量化しないと、寄与度の計算自体出来ないと思うのですが。
罠
遺伝と学力の話は本当にわかりづらい。
おそらくこれは「自然科学」とみせかけた「社会科学」という罠に、どこかで落ちているせいだと思う。俺が。
おそらくこれは「自然科学」とみせかけた「社会科学」という罠に、どこかで落ちているせいだと思う。俺が。
No title
「学力」を「運動能力」に、「環境」を「練習」に置き換えたら文章はどうなるかニャ?
さて、この置き換えは成立しているだろうか
「運動能力なんて遺伝で決まっちゃうんだから」という言説が最近は流行っている。「だから、練習したってムダムダ~」というところに話を持って行きたいのかもしれない。
でも本当に「運動能力なんて遺伝で決まっちゃう」のかな?
というわけで、今回は運動能力に遺伝がどれだけ影響を与えるか、というお話。
で、いろいろ調べた見た結果を最初に書けば、50%~70%ぐらいが遺伝によるものらしい。
こいうものは「らしい」としか言えないところが弱みと言っちゃあ弱みだが、まあ、精度としては仕方がない。むしろ言い切らない分だけ、良心的とも言える。
で、ここからが本題。仮に遺伝が60%とした場合について考えてみる。
そうすると試合の得点が80点の場合、80点×60%で48点が遺伝によるものか、などと計算してませんか。
俺はそう計算した。そしたらそれは間違ってるぞと叱られたわけです。安藤寿康慶應大学教授に。
安藤教授は次のように書く。
ここで、そもそもなぜ運動能力の遺伝の影響が60%と計算できるのか、その数値にどんな意味があるのか説明しておこう。
遺伝の影響が60%とは、試合の点数が80点だったとき、その60%にあたる48点までは遺伝で取れ、残り40%ぶんの12点を練習が補ったというような意味では全くない。それはある集団の成員の「ばらつき」を説明する割合である。
「ばらつき」とな?
これを説明するために安藤教授が持ち出したのが「2階建て理論」である。
ちょっと長いですが引用します。何しろ俺は自分の言葉で説明できる自信が全くないですから。
「ばらつき」というのはややなじみのない概念だと思うので、「2階建ての建物の高さ」の比喩で考えてみよう。
この建物の高さを決めているのは1階だろうか、それとも2階の高さだろうか。この問いがナンセンスであることはすぐにお分かりいただけるだろう。
「2階建ての建物の高さ」は「1階の高さ+2階の高さ」なのであって、その両方がそろって初めて全体の高さが定まる。
しかしここに5軒の2階家があり、1階の高さは3mで一定、2階の高さだけが2mから4mのあいだでばらついていたとしたとき、この5軒の高さの「ばらつき」を決めているのは1階だろうか2階だろうか、という問いであれば意味がある。
これは100%、2階の高さで決まっている。つまり2階率100%だ。今度は逆に2階の高さが3mで一定、1階の高さだけが2mから4mのあいだで散らばっていたとしたら、これら2階家の高さの「ばらつき」における「1階率」は100%、「2階率」は0%ということになる。
ここで1階も2階も、同じように2mから4mのあいだでランダムにばらついた組み合わせからなる5軒の2階家の高さについて考え見ると、1階も2階も同じ程度に散らばっているので、だいたい1階率も2階率も50%ずつくらいとなる。
また1階のばらつきは2mから4mと2mの幅だが、2階のばらつきはその半分で2.5mから3.5mと1mの間しかないとしたら、1階対2階の比が2:1となり、1階率がおよそ67%、2階率がおよそ33%となる。
遺伝と練習の割合も、おおむねこうした関係をイメージしてもらえばよい。
つまり運動能力において遺伝はばらつきが広く(67%)、練習はばらつきが狭いので(33%)、その結果(=家の高さ)を決めている割合は2:1で遺伝の方が大きい、ということである。
ここまで読んで「あれ?」と思った人も多いのでは。
俺は「あれ?」思いました。なんか思っていた「遺伝と運動能力」の話と随分違うな、と。
俺は「やってもやってもなかなか出来ないやつと、大してやらないのに出来ちゃうやつがいる」という文脈で、「遺伝と運動能力」を理解していたフシがあるようです。
しかし安藤教授は、ある2階建ての家の高さが、他の2階建ての家の高さとの違いを決めているのは(つまり運動能力の高さを決めているのは)、遺伝67%、環境33%だと書いている。
これなら「運動能力なんて遺伝で決まっちゃうんだから、練習したってムダムダ~」とは天地ほど違う。
遺伝はどうしようもない問題なのだから、つまり誰にもいじることの出来ない箇所なのだから、逆に言えば練習で差をつけるしかない。
たとえ全体の33%しか影響を与えられないとしても、やらなかったらリターンはない。
かつてスヌーピー先輩は
「配られたカードで勝負するっきゃないのさ、それがどうゆう意味であれ。」
と金言を残した。決して「カードが悪いんだから何をしてムダさ」とは言わなかった。賢いな、あの犬。
さて、この置き換えは成立しているだろうか
「運動能力なんて遺伝で決まっちゃうんだから」という言説が最近は流行っている。「だから、練習したってムダムダ~」というところに話を持って行きたいのかもしれない。
でも本当に「運動能力なんて遺伝で決まっちゃう」のかな?
というわけで、今回は運動能力に遺伝がどれだけ影響を与えるか、というお話。
で、いろいろ調べた見た結果を最初に書けば、50%~70%ぐらいが遺伝によるものらしい。
こいうものは「らしい」としか言えないところが弱みと言っちゃあ弱みだが、まあ、精度としては仕方がない。むしろ言い切らない分だけ、良心的とも言える。
で、ここからが本題。仮に遺伝が60%とした場合について考えてみる。
そうすると試合の得点が80点の場合、80点×60%で48点が遺伝によるものか、などと計算してませんか。
俺はそう計算した。そしたらそれは間違ってるぞと叱られたわけです。安藤寿康慶應大学教授に。
安藤教授は次のように書く。
ここで、そもそもなぜ運動能力の遺伝の影響が60%と計算できるのか、その数値にどんな意味があるのか説明しておこう。
遺伝の影響が60%とは、試合の点数が80点だったとき、その60%にあたる48点までは遺伝で取れ、残り40%ぶんの12点を練習が補ったというような意味では全くない。それはある集団の成員の「ばらつき」を説明する割合である。
「ばらつき」とな?
これを説明するために安藤教授が持ち出したのが「2階建て理論」である。
ちょっと長いですが引用します。何しろ俺は自分の言葉で説明できる自信が全くないですから。
「ばらつき」というのはややなじみのない概念だと思うので、「2階建ての建物の高さ」の比喩で考えてみよう。
この建物の高さを決めているのは1階だろうか、それとも2階の高さだろうか。この問いがナンセンスであることはすぐにお分かりいただけるだろう。
「2階建ての建物の高さ」は「1階の高さ+2階の高さ」なのであって、その両方がそろって初めて全体の高さが定まる。
しかしここに5軒の2階家があり、1階の高さは3mで一定、2階の高さだけが2mから4mのあいだでばらついていたとしたとき、この5軒の高さの「ばらつき」を決めているのは1階だろうか2階だろうか、という問いであれば意味がある。
これは100%、2階の高さで決まっている。つまり2階率100%だ。今度は逆に2階の高さが3mで一定、1階の高さだけが2mから4mのあいだで散らばっていたとしたら、これら2階家の高さの「ばらつき」における「1階率」は100%、「2階率」は0%ということになる。
ここで1階も2階も、同じように2mから4mのあいだでランダムにばらついた組み合わせからなる5軒の2階家の高さについて考え見ると、1階も2階も同じ程度に散らばっているので、だいたい1階率も2階率も50%ずつくらいとなる。
また1階のばらつきは2mから4mと2mの幅だが、2階のばらつきはその半分で2.5mから3.5mと1mの間しかないとしたら、1階対2階の比が2:1となり、1階率がおよそ67%、2階率がおよそ33%となる。
遺伝と練習の割合も、おおむねこうした関係をイメージしてもらえばよい。
つまり運動能力において遺伝はばらつきが広く(67%)、練習はばらつきが狭いので(33%)、その結果(=家の高さ)を決めている割合は2:1で遺伝の方が大きい、ということである。
ここまで読んで「あれ?」と思った人も多いのでは。
俺は「あれ?」思いました。なんか思っていた「遺伝と運動能力」の話と随分違うな、と。
俺は「やってもやってもなかなか出来ないやつと、大してやらないのに出来ちゃうやつがいる」という文脈で、「遺伝と運動能力」を理解していたフシがあるようです。
しかし安藤教授は、ある2階建ての家の高さが、他の2階建ての家の高さとの違いを決めているのは(つまり運動能力の高さを決めているのは)、遺伝67%、環境33%だと書いている。
これなら「運動能力なんて遺伝で決まっちゃうんだから、練習したってムダムダ~」とは天地ほど違う。
遺伝はどうしようもない問題なのだから、つまり誰にもいじることの出来ない箇所なのだから、逆に言えば練習で差をつけるしかない。
たとえ全体の33%しか影響を与えられないとしても、やらなかったらリターンはない。
かつてスヌーピー先輩は
「配られたカードで勝負するっきゃないのさ、それがどうゆう意味であれ。」
と金言を残した。決して「カードが悪いんだから何をしてムダさ」とは言わなかった。賢いな、あの犬。