FC2ブログ

記事一覧

数学は余りにも切れすぎる利刃なので

「数学は余りにも切れすぎる利刃なので、青年の人間形成にあたっての寄与は文学に及ばない。」(ステファン・バナッハ)

いきなり数学者、それもポーランド学派の数学者の言葉から始まったのにはワケがある。
いま書いている原稿の仕事が、数学に関して、だからである。まあ、数学といっても、ちょっと斜めから書いているけど。

さらに言うなら、冒頭の言葉、本当にバナッハが言ったかどうか自信がない。昔こんなことを読んだ記憶がするのだが……まあ、ちょっとばかり間違っていても、数学の定理とは関係ないので、バナッハも許してくれるだろう。

重要なのは「数学は切れすぎて青年には受けが悪い」というところ(意訳のし過ぎか?)。
この言葉は20世紀の前半の言葉だろうから、まあ100年前からあまり状況は変わっていない、とも言えそう。

しかしむしろ昨今の若者は「文学」よりもポップミュージックの「歌詞」の方に、強い影響を受けていそうだ。
かくいう俺(元若者)も、「歌詞」には何度もガツーンとやられている。

たとえば荒井由実(松任谷由実)の『あの日にかえりたい』(1975年)。

青春のうしろ姿を 人はみな 忘れてしまう

ガツーン。
青春を語る言葉は多いけれど、そして青春が過ぎ去っていくことの描写は溢れているけれど、過ぎ去った後のうしろ姿なんて想像もしなかった。

たとえば中島みゆきの『誘惑』(1982年)。

悲しみをひとひら かじるごとに子供は
悲しいと言えない 大人に育つ

ガツーン。
悲しみを「ひとひら」と数えるさまが美しい。そしてそれをかじる子供の悲しい絵が、脳内で再生される妙。

たとえばオフコースの『YES-NO』(1980年 作詞は小田和正(ちなみに聖光学院出身))

今なんて言ったの? 他のこと考えて 君のことぼんやり見てた
好きな人はいるの? 答えたくないなら 聞こえないふりをすればいい


ガツーン。
なんて都会的な詩だろう。さすがに帯広や八王子の娘たちとは違う(←偏見です)
『YES-NO』には次のような歌詞もある。

ああ 時は音をたてずに ふたりつつんで流れてゆく
ああ、そうだね すこし寒いね 今日はありがとう 明日会えるね

1行目と2行目とを「ああ」と同じ言葉で始めておきながら、視点を劇的に変えている。
結果、2行目の「歌い上げ」がきれいに決まるんだなあ(←カラオケ!)


キリがないのでこの辺で終わりにします。
さて、最後に冒頭の主人公、ステファン・バナッハについて少しお喋りしましょう。

バナッハはナチスによるポーランド知識人虐殺から奇跡的に逃れたが、1945年、肺癌で永眠。享年53歳。
彼は様々な小中学校向けの教科書を著したという。
このあたりwikiに頼っています。それしても小中学校向けの教科書をたくさん書いたというのは、いいエピソードだ。嬉しくなる。

数学の持つ重要性のひとつに、難解なことをやさしく伝える、ということが挙げられる。
何故なら、誰がやっても同じ解にならないのであれば、神の摂理を説明したことにならないからだ。
その点でバナッハは、偉大な数学者であることは間違いない。

にほんブログ村 受験ブログへ
にほんブログ村
スポンサーサイト



コメント

いずれまた

本丸としてさだまさしの話をしようと思ったのだが、そこ迄いかなかった。
まあ、いずれ書きます。

歌詞もそうですし俳句や短歌もそうですが、字数に制約があるからこそ、ことばが光を放つのだと思います。
置くことができる単語に制約があるからこそ、そのワンフレーズにどの形容詞を置くか、上の句にどの名詞を置くか等が決定的に重要になる。

『悲しみをひとひら かじるごとに子供は』の部分は、
『「か」なしみを「ひ」とひら「か」じるごとに「こ」どもは』となっており、
固さや冷たさを表すk音(「か」「こ」)の間に、やわらかさを表すh音(「ひ」)を挟むことにより、「ひとひら」のはかなさが強調されている。『か「じ」る「ご」とにこ「ど」もは』の濁音の重ねも、その効果を補強している。

『柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺』(正岡子規)

「か」「き」「く」えば「か」ねが・・・とk音を重ねることにより、柿を噛んだときの「今ここにある硬質感」を表しつつ、それと法隆寺がもつ「時空を超えた悠久感」を絶妙に対比している。

JGさんがいずれ書くと仰っているのにフライングで恐縮ですが、
私にとってさだまさしさんと言えば、2002年の山室裁判長による『償い』の説諭です。
あれからもう17年が過ぎたかあ…

※「説諭」
一般には、悪い行いを改めるよう教え諭すことをいいますが、法律家の世界では特に、刑事事件において裁判長が判決を宣告した後に被告人に諭すことを指します。

刑事訴訟規則第221条に「裁判長は、判決の宣告をした後、被告人に対し、その将来について適当な訓戒をすることができる」と規定されており、裁判長の説諭はこの規定を根拠とするものです。

No title

>重要なのは「数学は切れすぎて青年には受けが悪い」というところ

このお話の本旨は、数学が出来るより、素敵な詩を語れる方が異性に受ける、ということでしょうか?
フォーク全盛時代に若者がこぞってギターを弾いたり歌ったり、純粋な音楽ファンの方もいらしたでしょうけど、異性受けが目的の方も多かったはず。
数学の難問が解けても、全く異性受けはしなかったでしょうし、ましてや異性に熱く数学を語ったりしたら、二度と口をきいてもらえなくなったかも。
ステファン・バナッハさんのおっしゃる、青年の人間形成にあたっての寄与、というのは、ご自分の実体験に基づくお話かも知れませんね。

>数学の難問が解けても、全く異性受けはしなかったでしょうし、ましてや異性に熱く数学を語ったりしたら、二度と口をきいてもらえなくなったかも。

数学も、語り方を上手くすれば一つの詩になると思うのですが、語り方を間違えると奈落の底に落ちることになる気がします。
空気の読めない私もさすがに、高校時代に女の子に「今月号の『大学への数学』にさあ・・・」なんて語りかける勇気はなかったです。

No title

 オラの後輩が教育実習に行って一言。
 
「物理の教師、というだけで女子生徒には嫌われることがわかりました」

No title

>「数学は切れすぎて青年には受けが悪い」

昨年何冊かAIに関する通俗本を読んだのですが、その著者の一人(イギリスの女性数学者)が『愛の数学』という本も書いていて、TEDで同タイトルのトークを視聴できるようです。

https://www.ted.com/talks/hannah_fry_the_mathematics_of_love
JGさん、いつか何かの原稿書きの参考になれば。。。

*あ、TEDトーク視聴してみましたが、つまんなかったです。数学を使って理想の恋人を見つけたり、関係を長続きさせたりするには、という秋山仁さんがよくされていたようなお話しでした。
まぁ、これぐらいだと飲み会で女子と話す時のネタにはなるかもしれませんね。間違ってもバナッハ=タルスキーのパラドックスについて話すべきではありませんw

AI!早く翻訳機出せよ!

脛に傷さん、ありがとう、参考にするよ。
「英語かよ、吹き替えねえのかよ」とやさぐれていたら、下に日本語字幕ボタンを見つけて欣喜雀躍しました。

柴咲もいいけど吉高もいい

>「物理の教師、というだけで女子生徒には嫌われることがわかりました」

しかしその先生がTVドラマ『ガリレオ』の湯川学(演じるのは福山雅治)だったりすると、女子の反応も変わってくる。

「実に面白い」

ニッポニアニッポン

>JGさんがいずれ書くと仰っているのにフライングで恐縮ですが、
>私にとってさだまさしさんと言えば、2002年の山室裁判長による『償い』の説諭です。

もっとマイナーな、個人的な話でして。
俎上に乗るのは『前夜』です。

釈迢空も釈由美子も好き

>歌詞もそうですし俳句や短歌もそうですが、字数に制約があるからこそ、ことばが光を放つのだと思います。

この間、俳句と短歌の面白い本を読んだので、近いうちにそんなことを書こうと思います。

それにしてもk音やh音を出してくるあたり、甘えん坊将軍さんも知ってますねえ。

若かりし頃の自分にとって、詩歌(短歌俳句含む)は、青春特有の自意識過剰の熱を冷まし、自己嫌悪の痛みを和らげる熱冷ましや鎮痛剤だった。
これ!という作者にひたすらに耽溺するのである。まるで中毒のようであった。

今はだいぶ年を経てそういうことはなくなった。
でも少し前のまだ子どもが小さかった時分に、割と敷居の低いものに句を投稿したこともあった。
甘えん坊将軍さんみたいに本格的ではなく、まあ自己流の気分転換みたいなものだ。

最近は感性がすっかり鈍ってあまりやっていませんが、詩歌を読む(詠めないけど)のは相変わらず好きですね。

白鳥座さん、どうもです。
いや私は本格的でも何でもなく、『柿くへば…』の話も高校の時に受けた国語の授業の焼き直しです。

5年ほど前に歌人の穂村弘さんの歌論集やエッセイを好んで読んだ時期がありました。
ことばに向けられた穂村さんの眼差しが、私が普段仕事の中で向き合うことばへの眼差しと大きく異なっていて、とても愉快でした。
先日娘と初めて句会に参加し俳句を詠んでみましたが、ああでもないこうでもないとことばの組み合わせを絞り出すのは、爽快な経験でした。

No title

>(演じるのは福山雅治)だったりすると、女子の反応も変わってくる。

女子のSTEM教育強化に向けて、物理・数学の教師を顔面重視の採用にしてみるのはいかがでしょうか。

No title

>物理・数学の教師を顔面重視

 これぞ AI採用の出番かもしれません。
 筆記試験と面接の語り口 顔で 選ぶ。

「一番 女子生徒がやる気が出て、成績も上がる」人を選ぶ。

即効薬

>女子のSTEM教育強化に向けて、物理・数学の教師を顔面重視の採用にしてみるのはいかがでしょうか。

真面目な話、効果があると思います。

不純異性交遊?
知らん。

即効のち副作用

柴咲さんや吉高さんが数学物理の先生だったら私の成績が上がるか?
先生のところに質問に行く頻度は増えそうだな。そして質問の答えが耳に入らない頻度も増えそうだな。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ジャーナル・ギャップ

Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

最新コメント

最新コメント