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ウィスキーと不愛想な三白眼の女の子

以前、地元の友人連中と飲んだ後、駅の近くのカラオケ屋になだれ込んだことがあった。
部屋を決めて歌を適当に入れて、めいめい好きな飲み物を頼んだ。
やがて曲が始まり、がなり声がたてられ、飲み物が到着する。

「うっ」
ハイボールを頼んだ友人が口をおさえた。
「どうした、毒が入ってたか?」
「違う違う、これ、飲んでみろ」
言われて飲んでみて、「うっ」。

濃いのだ。とんでもなく濃い。
薄暗いからよく気がつかなかったが、色も濃いに違いない。
その分炭酸が弱いので、おそらく作るときに配合を間違えたに違ない。
その友人は仕方なしに、舐めるようにハイボールを飲むことになった。

それから一ヵ月ぐらいして、また同じカラオケ屋になだれ込んだ。
そして水割りを口にした途端、「うっ」。
デジャブだ。

今回は水割りだったので、水を追加追加で長く楽しめた。
そうなのだ。水割りを頼めばいいのだ。
俺たちは学習した。さすが東工大OBがいると人生が効果的になる(←違う)。

ところが、普通の水割りが出てくることもある。
そして2年ぐらいの間にわかったことがある。
異常に濃い水割りが出るときは、ほぼ同じ人間が受付にいるのだ。

その人間は、若い女性である。
歳は二十歳前後、背は低く、髪は短く、三白眼でいつも愛想がない。
マニュアルを棒読みするような接客だ。

おそらくはその女の子が、このヘビーウィスキーを製造しているに違いない。
大して客の来ないカラオケ屋だから、受付も厨房も一人で回しているのだろう。

「なぜ、あの子はウィスキーを多く入れてしまうのだろうか」
カラオケに来たのに歌などそっちのけで、俺たちは討議に入った。
「作り方がわからないんじゃないのか?」
「しかしレシピぐらい貼ってあるだろ」
「サワーと間違えている可能性は?」
「それはある」
「ねえよ、何年働いてると思ってるんだ」
「それよりも、以前客から「薄いよ」とクレームを入れられて濃い目に作っている、という可能性もある」
「それにしては濃さが常識外れだよ」

「ところであの子は社員なのかな?違うか」
「違うでしょ。年からいっても」
「でも、高卒で働いていれば…しかし、社員という感じは全くしないな」
「高校も卒業してる感じが全くしない」
「うん、俺もそう思った。カレシもいない」
「一度メンドクサイ奴と付き合って、それからもうそういうのがメンドーで、どうでもよくなっているに違いない」
「占い師か、お前は」

ガチャ。話題の女の子が飲み物を運んできたのだ。
俺たちが歌いもせずに顔を突き合わせているので、若干不審顔。
「ああ、どうもね、それ、適当にその辺においてくれていいから、ところでさ、いまの若い子ってカミオカンデって知ってる?ねえ知ってる?」
「……いえ、……知らないです」

「お前は馬鹿か」
女の子が出ていくと、質問をした東工大OBへの罵倒大会が始まった。
「どうしてカミオカンデなんだよ」
「なにガールズバーみたいなノリ出してんだよ」
「今のは事案だな」
「じゃあ聞くが、お前たちならどうしたっていうんだ?カミオカンデが駄目だというなら、何だったらいいんだ?ニュートリノか?バリオン非対称か?ペンタクォークか?若い女の子がエルゴード理論なんか知ってるもんか」

しばらくしてそのカラオケ屋はつぶれてしまった。
その後には居酒屋が入ったが、あの不愛想な三白眼の女の子はいなかった。

今ではあの子が何者だったのか、俺にはわかるような気がする。
あの子はウィスキーの女神だったに違いない。女神が大袈裟ならば精霊と言ってもいい。
精霊は吟遊しながら土地土地をめぐっていくのだ。

そしてもしかすると不愛想な三白眼の女の子は、今はあなたの街にいるのかもしれない。

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コメント

カミオカンデだけに、そのお店のウイスキーは、ニュートリノならぬニュートリスだったのかなぁ。。。

三白眼も、実は浜松ホトニクス社製のチェレンコフ光センサーだったのかなぁ。。。

No title

良く行くインド料理屋で、カレーがとても辛くなる日が時々あって、その日には必ずかわいい女の子(インド・ネパール系)が注文取りに来ていました。
そのことに気づいたのは、うちの独身スタッフでした。
彼は果敢にも彼女に名刺を渡しましたが、完全スルーされてたと、学生経由で聞きました。

そのうちその女の子はいなくなり、独身スタッフも転出しました。
カレー屋には今でも新しいスタッフたちと時々訪れます。
元独身スタッフの方は、昨年結婚して最近こどもが生まれました。
ここ数日その彼と共同研究で会っていて、さらにJGさんの記事を読んで、昔のことを思い出しました。

バリオン非対称もペンタクォークもエルゴード理論も知らんわ

実はこの時の東工大OBのセリフはあまり覚えてなくて、カミオカンデとニュートリノ以外はテキトーです。

愛想笑いの得意なタヌキ顔の元少女

>ニュートリノか?バリオン非対称か?ペンタクォークか?
→すごいデジャヴ感・・・昔々お好み焼き屋さんやら居酒屋さんやらでよく聞かされていたような気がいたします(^^;
 当時は何の事やらサッパリ??でしたが・・・ン十年後に子供と一緒にKEKのサイエンスツアーに参加してようやく少しだけ理解する事ができました。

KEK(高エネルギー加速器研究機構)は一般向け見学ツアーもやっているのですね。
それは興味アリです(妻子はまったく興味を持たなそうだけど)。

ちょうど職場に立花隆『小林・益川理論の証明』(朝日新聞出版)が置いてあったので、少し読み返してみました。小林・益川理論の検証(CP対称性の破れの発見)のために、KEKのBファクトリー加速器で電子と陽電子の塊を毎秒5億回衝突させて解析を続けたのだと…

…今日も一日頑張れそうな気がしてきました。

先日国際線の機内でウィスキーをオンザロックでお願いしたところ、ダルマ型のグラスに、どう見ても正味100mlくらいのウィスキーが氷と共に登場しました。(これが噂の千葉流でしょうか。成田ではなく羽田発の便でしたが。)

シャンパーニュとワインと日本酒を頂いた後だったので、さすがに多いと思い、一計を案じました。配られたミネラルウォーターのボトルを空けて、そこにウィスキーを移し替えて渡航先に持ち込むのです。(我ながら、貧乏性です。結構高級な物だったので・・・)
しかし、ダルマ型のグラスから、口の細いボトルには中々上手く入らず、相当こぼしてしまい、床からは芳しいモルトの香りが漂っていました。

次回は、広口の瓶を持参して、万全の態勢で臨む所存です。

旅のおもひで

甘えん坊将軍様:
 昔、つくばサイエンスバスに夏休み親子ツアーというのがあったような記憶がございます。子供向けのサイエンスツアーにはKEKも含まれており、解説をして下さる研究者の方と一緒に見学をする事ができました。国立科学博物館筑波実験植物園とセットにすれば、奥様とお嬢様も楽しめるのではないでしょうか?

陸宿借様:
>床からは芳しいモルトの香りが漂っていました。
 リッチなご旅行でしたね。私は離陸前にCAさんが缶ビールを2本ずつ配ってくれるような格安エコノミーしか利用した事がないので羨ましい限りでございます。
 ちなみに、コップの下に深目の受け皿を敷いて、コップはもちろん受け皿からも溢れるほど安酒を注ぐのが千葉流でございます。氷や割り物は別添え又は別注文になります。上総はおそらく庶民に優しい女神の国なのだと思います。

No title

KEKの一般公開は1度行きましたが、充実してました。
震災のころ、みんなが放射能に敏感になっているころに「霧箱で放射線をみよう」というのをやっていて、刺激的だな~と思いました。
霧箱は、子供たちが作って家に持ち帰ることのできるタイプのものでした。
この手の一般公開は、いろいろな研究所で行われているので、小学生くらいの子供を連れて行くのは良いと思います。
中高生の私の子供たちには、「行ってきたらどうか?」といったけど、スルーされました。
その代りか分かりませんが、大学の学園祭に友達と行っていたようです。

受験生向けには「オープンキャンパス」というのがあります。
たとえば東大では8月7,8日にあるようです。

No title

 オラはNHK技研で卒業研究をした。
 技研の一般公開に向けて働かされたのを思い出す。

 NHK技研で卒業研究? なんだそれ?
 と思った貴方。

 そうです。おそらくは陸宿借さんとかクロコマさんとか そう思われたでしょう。

 実は私大理系には国立にはない(らしい)制度がある。  「外研」である。
 大学内部で研究するのではなく、外部の研究所で研究するのだ。 卒業研究だけでなく 修士博士もある。 理化学研究所 産総研・・ 色々な外研がある。

 外研というのは学生にとってメリットとデメリットがある。 最先端の研究所で研究できるのがメリット。うかうかすると奴隷のような働き方改革違反の実験マシーンで終わる可能性があるのがデメリットだ。

 私大は、教官一人当たりの学生数が多く、キャンパスも手狭なため、外研という制度があると考えられる。
 
 まあ、自慢できる話ではない。

Geminiさん、どうもです。
筑波実験植物園の情報をありがとうございます。Geminiさんのアンテナの広さにはいつも唸らされます。

クロコマさんやハルビンさんのお話も大変参考になります。
やはり親自身が理系ですと、研究生活や理系人のキャリアパス等について、自身の経験・体感として知っておられるので、有形無形に子どもに伝わるものが大きいように思います。

 清水の舞台から飛び降りる覚悟で、近所のスーパーのお楽しみワイン福袋999円を購入。入っていたのは『シャンパーニュ シヤイヨ ブリュット』やはり上総には庶民に優しい酒の女神が住んでいるのだと思います。

甘えん坊将軍様:
>Geminiさんのアンテナの広さにはいつも唸らされます。
→皆さま方の様に難しい勉強も仕事もしておりませんので、単純に遊ぶ時間がたくさんあるのでございます(^^;
 
 ちなみに筑波の植物園には上野の国立科学博物館に収納しきれなかった動物のホネがたくさん展示されておりました(笑)

999

>入っていたのは『シャンパーニュ シヤイヨ ブリュット』やはり上総には庶民に優しい酒の女神が住んでいるのだと思います。

豪気な福袋ですね。999円か。いいなあ。

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No title

ハルビンさん、どうも。

NHK技研の一般公開に向けての卒業研究、というのは、なにやら華々しい感じで良いですね。
私の卒業研究は、外研ではありませんが、私が所属していた学科が当時主導していたプロジェクトの一部として、協賛企業が提供した構造部材の理論的な強度計算と、破壊実験により実際に確認した強度との比較、というのを夜な夜なやっていました。

我ながら、こういう根気が必要な作業は向かないなあ、やっぱり文系就職して良かったなあと思いつつてれてれ作業するダメ学生を温かく指導して卒業させてくれた先生方には感謝しかありません。

No title

大学3年生の後半、研究室を選ぶ頃になると「タコ部屋情報」というのが回って来る。
 研究室のハードさ(実験の拘束時間の長さ) 一覧である。  もちろんやりたい研究があって上を目指す人は実験のハードさなんて関係ない。 実験は1日中やっても死ぬことはないのだ。(多分)

 でもグータラ学生やバイトしたい遊びたい学生にとってはそういう情報は貴重である。

 実験がない、という面では理論研究は楽だが、そういう所は別の意味でハードだったりする。(ひたすら英語の論文を読んで理解しないといけないのだ)

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ジャーナル・ギャップ

Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

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