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宮部みゆきの宝石のような小説たち

今回は宮部みゆきの話。

宮部みゆきの代表作と言えば「火車」になるでしょうか。読んでいる間の緊張感はもとより、犯人の扱い方の独創性に、当時かなり驚きました。
(どう独創的かと言えば…ネタバレになっちゃうかもしれないから、そこは読んでのお楽しみ)
でもね、いまひとつ、「おおっ!」というのがないんですよ、個人的には。
文章力もある、構成も巧み、ミステリマインドに溢れている。もうここまで揃っているのに、それ以上を求めるのは野暮なのでしょうが、なんというか、あれだけの長さの小説につき物の「破調の美」が足りない。

むしろ宮部は長編ではなく、短編に傑作がたくさんあります。
特筆すべきは「サボテンの花」(『我らが隣人の犯罪』収録)。
誰も死ななければ、一滴の血も流れない。それどころか犯罪すら…厳密に言えば犯罪はあるのかな、まあ、そんなことはどうでもいい。
日本の短編推理小説傑作選というのを編むのなら、とにかく入れたい作品です。
(でも本当にそんなアンソロジーを編むとなったら、とんでもなく悩むと思いますが。人生最大の苦悩と悦楽。)

ここで終わりにしてもいいのですが、宮部みゆきは「短編がいいよ、長篇はイマイチ」なんて纏められるほど、薄っぺらい作家ではありません。
たとえば『模倣犯』。ラスト50ページの有馬義男の哀切すぎる弾劾。
「いいや、お前は忘れられる。俺たちはそうやって何十年の間、何でも忘れてきたんだ。戦争だって忘れてきたんだ

たとえば『ソロモンの偽証』(文庫本6冊!)の神原和彦の冷たい炎のような弁論。
「被告人は、手の負えないワルで、地元での評判も最悪で、こんな濡れ衣を着せられたってどうということない、放っておいたっていいような不良です。…でも、無実なんです

震えるねえ。

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ジャーナル・ギャップ

Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

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