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ワルサーP38~本物かモデルガンかなんてわかるわけがない

今回は前回の「ワルサーP38~Mという男」(2019/04/20)の続き。
MからワルサーP38の欠陥がどこにあるか当ててみろと宿題を出された俺だが、結局わからないまま、Mの答え合わせを聞くことになる。

「降参だよ」
「そうかい。第11話、7番目の橋が落ちるとき、ラストシーンを覚えてるか?」
「リサちゃんの乗ったボートが暴走して、警官に囲まれたシーン?」
「その前だよ。ルパンが桟橋を使ったジュットスキーの上で、手錠に繋がれた状態でワルサーを撃つシーンだ」
これは名シーンだから、当然俺は覚えてる。しかし何が欠陥なのかまるでわからん。
「右手でワルサーを撃つルパンを、画面は左からとらえてる。そのルパンの顔を舐めるように、薬莢が飛んでいく。どうだ、わかったろ?」
「????」
「銃身の左から薬莢が出ていくということは、撃った人間に向かって出ていくということ。平面では問題なくとも、斜め下方に撃ったときはちょっと厳しい」
それから俺は時々、Mと話すようになった。

それから半年ぐらいして、Mが昼休みに俺のところにきた。油紙に包まれたお土産持って。
「これ、開けてごらんよ」
開けると銃がゴロンと出てきた。ワルサーP38だ。
ズシリと重い。本物か、と訊くと、まさか、モデルガンだよ。

「見てごらん、ここから薬莢が出る」そういって俺にワルサーを握らせる。
「こうすれば撃鉄が上がる。・・・さあ、引き金を引いてごらん」
この時の俺の感情は、何とも形容しがたい。

こんなもの、モデルガンに決まってる。本物のワケがない。だがこの重さは何だ。それにMのあの顔は。
いつも倦み疲れたような顔をしているMが、目をしっかりと開き、生気ほとばしるような顔をしている。
「さあ、撃ってごらん」
結果的に俺は撃たなかった。撃つも撃たないもない、状況から逃げるようにワルサーを机にそっと置いた。

それからずいぶん経ってから、俺はMにあの時のワルサーはモデルガンだったのか、と訊いたことがある。
「本物だよ」Mは素っ気なく答えた。
「おそらく弾も入ってたんじゃないかな。俺はあそこでお前がふざけて俺を撃つんじゃないかな、と期待してたんだ」
「……」
「銃を鞄にしまいながら、こんなことに命を賭けるとは俺もずいぶん馬鹿な男だ、これじゃあ他人を笑えないって、ちょっと悟ったよ」
それからまだ呆然としている俺に顔を寄せて、Mは続けた。
「冗談だよ、あれはモデルガンさ」

Mとは今でも時折会う。老獪さはさらに磨きがかかり、おそらく100人が100人とも「付き合いたくない奴」に認定するだろう。
しかしあの時のMの表情やワルサーの重さ、そして油紙のガサコソという音までもが、俺の青春のひとコマに強制的に組み込まれてしまっている。
運命と言えば大袈裟だが、そんなわけで俺は『ルパン三世』と聞けばMのことを思い出し、時々二人してバーで酒を飲みながらポツリポツリと昔話をするのだ。

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コメント

No title

北海道の小学校にクマが出没したそうだ。

交番の警察官が最初目撃したそうだ。 警察官って持っている拳銃でクマ撃っちゃいけないのかな?  なんか法律違反とかで大問題になりそうだニャ。  日本は平和だ。ほほほ。

 なんぞヤクザの方が躊躇なく自動小銃ぶっぱなしたりするが・・・(これは全然笑えない)

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ジャーナル・ギャップ

Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

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