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その「証拠」は論理的か?

うっかりよそ見しているうちに終わった感のある第91回選抜高校野球だったが、ちょっと話題になったのは「サイン盗み」。
そう、星稜の林監督が習志野相手にクレームをつけている案件だ。

林氏は「証拠がある」と鼻息荒いが、なかなかその「証拠」とやらが出てこない。
そもそも高野連は「サイン盗みはなかった」という結論を出しているので、公式なステートメントはおそらくこの先出てこないだろう。
となると林氏に期待がかかる。俺としては有料会員になってもいいから、その「証拠」というのを早く見たい。

さて、習志野高校はセカンドランナーがサインを盗んだり、キャッチャーミットの位置を教えていたのかどうか?
証拠がないなら、状況証拠を固めてみようか。
まずランナーが2塁にいたときに、習志野の打率は大きく高くなっているのだろうか?

習志野の1回戦(対日章学園)での打率は37打数12安打。打率は.324。
ランナーが2塁にいないときは26打数9安打。打率は.346。
ランナーが2塁にいたときは11打数3安打。打率は.273。

問題の習志野の2回戦(対星稜)での打率は33打数7安打で.212。
ランナーが2塁にいないときは28打数5安打。打率は.179。
ランナーが2塁にいたときは5打数2安打。打率は.400。

1回戦ではランナーが2塁にいたときの方が打率が低いので、この時は習志野はサイン盗みをやってなかったのだろうか。
2回戦ではランナーが2塁にいたときの方が打率が圧倒的に高い。しかし5打数2安打じゃあ、数が少なすぎて何とも言えんなあ。

尤も星稜は習志野戦で9度ランナー2塁のチャンスがあったにもかかわらず、1本しかヒットを打てなかったので、2度チャンスをものにした習志野に良い感情を持たなかったのは人間としてわかる。
しかし星稜が考えるべき点は習志野のことじゃない筈だ。ランナー2塁の9度のチャンスのうち、1度などは牽制で刺される間抜けっぷり。それも2点を追う終盤8回のことだから、相手のサイン盗み云々よりも敗因がどこにあるのかは歴然としている。

ちなみに習志野が日章学園戦でサイン盗みをやっていたとしたなら、ちょっと腑に落ちない攻撃をしていることになる。
●3回の攻撃(ノーアウト2塁)でセーフティバント(結果的には送りバント)を敢行している。もし2塁にいることでサインが盗めるなら、バントなどせずにガンガン攻撃させるはずだろう。
●7回の攻撃(1アウト2塁)では、外野フライでタッチアップしている。これも上と同じで、3塁へ行くより2塁にとどまっていた方が賢いはずだ。もしサインを盗んでいるなら。

この件を統計学的に考えるなら、ほかのチームの「ランナーが2塁にいない場合の打率」「ランナーが2塁にいる場合の打率」とを出して、習志野の場合との比較をする必要がある。

無論、星稜の林監督の言う「証拠」とはそういうものではなく、映像によるものだと思うが、これだって統計学的なアプローチが必要になる。
たとえば「ヘルメットを触ったからカーブ」だというなら、2塁ランナーがヘルメットを触ったすべてのケースを抽出して、次のボールの球種を検証しなければならない。
「ヘルメットを触ったときにカーブだった、それが3回もあった」と言ったところで、ヘルメットを触ったのが12回もあっって他の9回はストレートやフォークだったというのなら、それはサイン盗みの証拠とは言えない。

まさかそんな論法ではあるまいと思うが、世の中には自分の都合のいい理屈しか見えない人もいるからなあ。
というわけで、証拠があるなら早く見たい。

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コメント

サイン窃盗罪

最近読んだ本の中で、数学の言葉は「論理」「確率」「統計」の3つしかないと書かれていました。
今回のサイン盗みの証明は数学のそれとは異なりますが、「論理」では難しく、「統計」を用いた疫学的証明でいくしかないのかもしれませんね。

証明すべき事実(要証事実)の存在を直接的に証明するのが「直接証拠」であり、要証事実の存在を間接的に推認させるのが「間接証拠」である。
典型的には容疑者の自白は直接証拠である。被害者のDNA型と一致する血液が付着した刃物が容疑者の所有物であるなら、それは間接証拠である(朝から物騒な話ですみません)。

習志野の選手がサイン盗みを自白したらそれは直接証拠となる。自白がないなら、他の間接証拠からサイン盗み(要証事実)を推認するほかない。

上記の刃物(「犯行に使われた凶器を容疑者が所有していた」との間接証拠)から容疑者の犯行(要証事実)を推認するのは経験則・論理則に適う(もちろん、「その刃物を容疑者以外の人間が手にすることはない」などの他の間接証拠の積み上げが必要であるものの)。
しかし、サイン盗みを推認させるような、論理則・経験則に適った間接証拠(「これこれこういう事実が認められればサイン盗みがされたものと合理的に推認してよい」とされる事実)というものを見出すのがなかなか難しいかもしれない。バレないように手を変え品を変えて行われるのがサイン盗みなのだから。

No title

 日本人留学生がフランスで行方不明になった事件で、フランス当局は「殺人の疑いで」チリ人を国際手配した、ということだ。

 もし仮に日本で同様の事件が起こったら、国際手配できるのだろうか。 日本の司法では、よほど明確な証拠がない限り「行方不明」で「殺人の容疑」は困難だと思われるのだが・・・

※明確な証拠とは例えば「殺人の様子の映像が残っていた」とか・・

モンキー・パンチさんに合掌

国際刑事警察機構(インターポール)における国際手配の手続についてはわかりませんが(銭形警部がなぜ日本国外でもルパンを追跡する権限を持っているのかもわかりませんが)、日本の国内法的には、逮捕のためには「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由(+逮捕状)」があれば足り(刑事訴訟法199条1項)、有罪認定に必要な「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証」までは不要とされています。

つまり、裁判所が犯罪事実を認定するための証明のレベルよりも、逮捕状発令要件のレベルのほうが軽いわけです。

No title

おはようございます。

>逮捕状発令要件のレベルのほうが軽い

 なるほど。
 日本でも同様の事件で国際手配できる可能性があるわけですね。

日本では、死体遺棄とか別件の逮捕をよく見るので 「殺人」での逮捕はかなりハードルが高いのかと思っていました。

時間制限と立証の難易

おはようございます。

>日本でも同様の事件で国際手配できる可能性があるわけですね。

詳しくはわかりませんが、日本で発生した事件でも同様に国際手配できる場合はあると思います。

>日本では、死体遺棄とか別件の逮捕をよく見るので 「殺人」での逮捕はかなりハードルが高いのかと思っていました。

有罪認定よりも逮捕のほうがハードルが低いとはいえ、逮捕は、居住・移転の自由(憲法22条1項)などの国民の重要な人権を制限する公権力の行使ですので、適正手続を保障した憲法31条(いわゆるデュー・プロセス・オブ・ロー)や、現行犯逮捕の場合を除いては司法官憲(裁判官)が発する令状によらなければ逮捕されないことをあえて明記した憲法33条の趣旨に照らせば、安易になされるべきものではありません。

私が思うに、多くのケースにおいて、いきなり殺人容疑で逮捕するのでなく、死体遺棄や傷害致死等の別罪の容疑で逮捕するのは、「殺意」の認定が簡単ではないからです。死体遺棄や傷害致死には殺意は不要ですが、殺人については殺意が犯罪成立要件となります。

警察が被疑者を逮捕すると、48時間以内に検察に送致され、そこから24時間以内に検察は起訴するか勾留請求します。多くのケースでは勾留請求されます。勾留は原則10日間であり、その後さらに最大10日間の延長が可能です。勾留や勾留延長は、検察官の請求により裁判官が決めます。
つまり逮捕後起訴するまでの身柄拘束期間は、72時間+20日間=23日間が最長となります。
この最長23日間のうちに、警察及び検察は、有罪認定に必要な証拠(合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証に必要な証拠)を集めなければなりません。

「殺意」を認定するための最たる直接証拠は自白です(このために自白が強要されるなどして過去に冤罪事件が繰り返されたのは周知のとおり)。
また被疑者が自白をせずとも、客観証拠から殺意を認定することも可能です。被害者の創傷の部位(頭部や心臓部、頸部などの身体の枢要部に損傷があれば殺意を認定する方向に傾く)、創傷の程度(傷の個数、長さや深さ、刃物が身体に侵入した角度など。身体に対して垂直方向に刃先が侵入し、深い創傷があれば殺意を認定する方向に傾く)などから認定するわけです。

自白を得るにせよ客観証拠から認定するにせよ、殺意の立証は簡単なものではないため、23日間では足りない可能性があり、まずは立証が比較的容易とみられる死体遺棄や傷害致死の容疑で逮捕をし、その捜査結果を踏まえてさらに後日に殺人容疑で再逮捕する、ということになっているのだろうと思われます。

毎度毎度、朝から物騒な話でごめんなさい…

もう一つの時間制限

ふと松山ホステス殺害事件のことを思い出しました。

1982年8月19日に殺害事件を起こし、公訴時効成立21日前の1997年7月29日に逮捕され、同年8月18日(公訴時効成立11時間前)に殺人罪で起訴されています。

現在は殺人罪の公訴時効は廃止されていますが、当時は15年という公訴時効が存在していたがゆえに生まれたドラマでした。

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ジャーナル・ギャップ

Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

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