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探偵たちの懐事情

今でこそ毎月のクレジットカードの分がきちんきちんと引き落とされているが、少し前まで「旦那、口座に金がなくて引き落とせねえぜ」って言われ続けた身としては、カネの話は世知辛いが避けがたい。
それでも中学受験をめぐるカネの話なら以前に書いたので、ここではもっとのん気に名探偵のカネの話を書きます。

探偵の嚆矢としては、エドガー・アラン・ポーが創造したオーギュスト・デュパン
五等勲爵士ということだが経済的には窮乏している。警視総監から事件を依頼されるからそれ相応の報酬は得てるだろうが、食っていけないよな、それだけじゃ。
夜な夜なパリの街を徘徊していたというから、何か後ろ暗い仕事でもしていたのか。

エルキュール・ポアロは亡命ベルギー人だが、ベルギーでは警察署長まで務めたので、その時の金を持ってイギリスに来たのだろう。ただそれだけじゃ戦後のインフレが激しい折、秘書を雇ったり、高級アパートメントを借りたりすることは叶わないだろうから、随分と依頼料を巻き上げたに違いない。
上流階級の事件をやまほど解決してるからな。しかし金を受け取る描写はほとんど出てこない。
クリスティがそうした下々のやり取りを嫌ったかな。

ハードボイルドとなるとそのあたりはシビアで、フィリップ・マーロウはしばし金に困っていることを口に出す。しかしそれでいて、親友テリー・レノックスから貰った5000ドル札は金庫にしまい込み、使うそぶりは見せない。
ホントに困ってるのか?

リュウ・アーチャーとなるとビジネスと金は不可分になり、困っている人間に「自分を雇え」とセールスをかける。
無論これは解決のための処方箋であり、多くの場合、言われた方はアーチャーを雇う。そして事件は動き出す(但したいていの場合、悲劇的な方向に)。

デュパンやポアロの時代は探偵は神の如き存在で、依頼料は供物のような意味合いだったのかもしれない。
しかしアーチャーとなるとそれは医者のようなもので、困難を解決する技術料として対価が発生することになった。
無論それより以前から現実では探偵に何かを頼むのは依頼料が必要だったわけで、ようやく小説でもそこに追いついた、ということだ。
読者の認識が、推理小説が「おとぎ話」から「実話」へ移行することを許したからかもしれない。

さて、以前横溝正史のエッセイを読んでいたら、「映画『犬神家の一族』のラストシーンで金田一耕助が依頼料を受け取るシーンがあって驚いた」というような一文があった。
確かに金田一が金を受け取るのは読んだことがない。まあ作者の横溝本人がそう書いているのだから、ないのだろう。
この映画は1976年市川崑監督、石坂浩二主演のものだ。確かにラスト近くで古舘弁護士(小沢栄太郎)から金田一は礼金と必要経費を受け取る。
しかし古舘弁護士が「これは私の感謝の気持ちで」と出した謝礼を、彼は殺人防御率の悪さを理由に固辞する。
ビジネスとプライドの相克か。

※ちなみにこのシーンに入る前から大野雄二のあの名曲が流れ始めていて、終焉の気配を色濃く醸し出しながら映画は進んでいく。

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コメント

No title

探偵って、余計な経費がかかる。
例えば・・

 暴力団やマフィアがやって来て事務所をめちゃめちゃに荒らしたりする。修繕費がかかる。

 銃撃されたり、警察に留置されて拷問を受けたりする。医療費がかかる。

 ただ、教育費はかからないようだ。子供を中学受験の塾に行かせている探偵は見たことがない。

探偵の確定申告に興味津々

>探偵って、余計な経費がかかる。

確定申告の時期が近づいてきましたが、探偵ですと、経費で落とせるか微妙な支出や、領収書がもらえない支出があったり、支払調書を発行してもらえない報酬があったりしそうで(それはそれで問題ないのかもしれないが)、なかなかスリリングですね。

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ジャーナル・ギャップ

Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

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