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騙され続けていた青春~このフランス人を探しています!

本棚を見ればその人の人格がうかがい知れるという。「本当かなあ」と思う反面、他人の本棚を見るのは楽しい。
しかし雑誌などの「本棚拝見」などという企画は面白くない。あれはよそ行きの本棚で、なんともお行儀がよすぎる。
(でももしかするとあれが本当で、俺の本棚の行儀が悪すぎるのか?)

さて俺の本棚には内外のミステリやら文学やら、フィクションがほとんどを占めている。
ノンフィクションとなると好きな作家の随筆や、写真集(色っぽいものだけじゃないよ)、仕事で使う本など。

で、そんな本棚の奥底に角川の文庫本で20冊ばかり同じ著者のエッセイがある。
ポール・ボネ、フランスの貿易商。仕事柄日本での滞在が長い彼が書いた、日本の文化論風エッセイだ。
『不思議の国ニッポン』というシリーズタイトルで20冊ほど出てる。俺はそのほとんどを読んだことになる。

本の中身はwikiによると「1970年代半ばから1980年代を経て、1990年代半ばまでの日本の内外の政治・外交・事件や諸々の風潮について、時折り休載を挿みつつ歯に衣着せぬ筆致で論じた。」とある。
悔しい話だが、俺の性格・政治信条・行動原理の何%かは、このポール・ボネの影響下にある(なぜ「悔しい話」なのかは後述します)。

俺はこのフランス人から多くのことを学んだ。
政治的な右と左の違い(俺が保守的なのはこの御仁の言説に依る所が大きい。え?お前は保守とは思えないって?そりゃどうも。若返った気がするね)、フランスから見た日本の伝統美、そして伝統だけでない、新しい日本の美および美徳。

全体的には「ニッポン万歳!でも古き良き日本を捨ててはいけないよ」ということであり、具体的に言えば若者文化への懐疑、アメリカイズムへの嫌悪、礼節重視の賛美、といったところか。
なぜか具体例を書き出すと今の俺にあまり合致していないが、それでも俺という人間がポール・ボネという人間から大きな影響を受けたのは確かだ。
なぜなら俺は高校時代、恋を失うたびにこの本を読み、そうかあのときの条約締結にはそういうウラがあったのか、あの法律の成立を急いだ理由はここにあったのか、こうした背景があったからあの商品は大ヒットしたのか、などと恋愛とは全く関係ない思索にふけることで、なくした明日を拾い集めてきたのだから。

ここでタネを明かそう。
このポール・ボネという人間、実は存在しないらしい。藤島泰輔のペンネームというのが現在の定説。
藤島泰輔というのは小説家だが、寡聞にして知らない。wikiによると「今上天皇(当時は皇太子)と「ご学友」達を題材にした小説『孤獨の人』で作家デビュー」とあるし、その序文を三島由紀夫が書いたとのこと。へえ、でも知らない。知っているのは(こっちの方が重大事)、メリー喜多川の旦那だったということ。

俺が「ボネ=藤島」を知ったのは、スマップ分裂の時にいろいろ調べていた時だから、ついこの間と言ってもいい。あいつらが反目しなかったら、ついぞ気づかずに棺に入ったんだろうな。感謝すべきか。

しかしこのことにたどり着いたときは、いささか混乱したね。四半世紀以上も俺はこの男に騙されてきたのか。
その事実を前に俺は冷笑的になったが、どんなにうまく肩を竦めてみても、俺がこの男から与えられたものは、いかに俺本人とはいえども奪い取ることはできない。

まあしゃーない。ポール・ボネは藤島泰輔が生んだキャラクターだが、同一人物というわけではない。
シャーロック・ホームズとコナン・ドイルが別人格であるのと同じだ。

それしても、きれいに騙され続けていたわけだよ、俺は。

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コメント

No title

何かの形を借りて、批判や苦言を呈するというのは、有効な手段ですね。ボネ氏=藤島氏の場合は、同じ日本人ではなく、日本をよく知る外国人から語る形をとることで、当事者によるものとは違う「客観性」を感じさせるという手法でしょう。

マツコ・デラックスさんは相変わらずご活躍のようですが、彼女(彼?)の女性に対する毒舌が女性から反発を受けないのは、男性でも女性でもない、中立的な立場からの「客観的」な意見、と捉えられているからではないでしょうか。

女性がオカマバーに行き、彼氏に対する愚痴を言うと、ほとんどの場合女性の方が逆に諭されたり、「あんたみたいなワガママ女に付き合ってくれる男がいるだけで奇跡よ」などと言われたりしますが、皆反発どころかスッキリして帰って行きます。この「客観的風」を利用した手法は、意外と我々の身近な所にも浸透しているように思います。

> 何かの形を借りて、批判や苦言を呈するというのは、有効な手段ですね。ボネ氏=藤島氏の場合は、同じ日本人ではなく、日本をよく知る外国人から語る形をとることで、当事者によるものとは違う「客観性」を感じさせるという手法でしょう。

そういや小松左京『明日泥棒』という小説は、その「外国人」の役割を「異星人」がやってたな。
ちなみに「不思議の国ニッポン」シリーズは中盤以降えらくつまらなくなった。
あれは藤島氏の批評眼やら文章の構成力が衰えていったせいもあるだろうが、この虚構に作者本人が耐え切れなくなったせいもあるのだろう。

No title

ポール・ボネは知らないけど(ひょっとして昔は知ってたかも)、イザヤベンダサン(山本七平)は、本多勝一との論争相手として知ってました。
本多勝一との中国の旅論争を、中学から高校にかけて興味深く読んでました。
当時私は本多ファンだったので、当然その立場を支持していましたが、今はだいぶ変わりました。

僕は本多勝一はかなり影響を受けたと思います。
#今は、大東亜共栄圏?わりといいんじゃない?とか思ってたりしますが。
昔日本がしようとしていたことを、今中国がしてますね。

No title

クロコマ様

 私も年々 左翼→右翼  になってきましたが

フランスの政治家ジョージ・クレマンソー「20才で社会主義者でなければ、情熱が足りない。30才でもそうならば、頭が足りない。」
(チャーチルが言ったとされる俗説もあり)

 そうだよなあ、と思うこともあります。

イザヤ・ベンダサンなんて名前はイスラエルでは普通にあるのか?

> ポール・ボネは知らないけど(ひょっとして昔は知ってたかも)、イザヤベンダサン(山本七平)は、本多勝一との論争相手として知ってました。

イザヤ・ベンダサンとは懐かしいね。

ただ俺は氏の著作を読む前に、遠藤周作のエッセイで遠藤が「イザヤ・ベンダサンというのは誰かの筆名だろう。その由来は「いざや、便、出さん」に違いない」と書いていたので、最初からなんとなく誰か日本人なのだろうと思っていた。
無論、山本七平なんて頭の片隅にもなかったけど。

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ジャーナル・ギャップ

Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

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