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『六月の花嫁』(北村薫)~本当なら3人殺されていた

今回は『夜の蟬』(北村薫)に収録されている短編「六月の花嫁」について。
この短編小説には初読時に強い印象を受けましたが、今一つその印象の内容が掴めませんでしたので、今回再読して気が付いたことを少し書きます。
内容について触れますので、「それはちょっと」という人は=======で区切られているところを見ないようにお願いします。
でも、トリックも犯人も明かしません。この作品はそこが「勘所」じゃないんです。

じゃあ、始めますよ。

====================

この小説に登場するのは男A、男B、女A、女B、女Cの5人。
男Aと女Aがカップル。このカップルがチェスをやる。男Aの圧勝。
その後、男Aと女Aが買出しに出るというので、男Bと女Bがチェスをもって2階に上がる。
女Cは近くを散策する。
男Aと女Aが買出しから戻ってきて、女Cも散策から戻ったのでまた5人が集まる。
3人がいない間の男Bと女Bのチェスの戦績は2勝1敗で男Bの勝ち。 (おっ?共学別学論争勃発か?)
男Aと女Aがチェスを再戦しようとした時、不思議なことが起こる。
チェスのクイーンの駒がないのだ。
女C「リスがもって行っちゃったのかしら?」
クイーンは意外なところにあった。冷蔵庫の卵いれの中。代わりに卵が1個なくなっている。
その卵も不思議なところで見つかる。浴槽の鏡の前。
クイーン、卵、鏡……

====================

この小説は北村らしい言葉遊びが横溢しており(リスに準じる、とかね)、楽しいどんでん返しやじわりとくるラストシーンなど、ちょっとしたハートウォーミングな味わいがあります。

でもね、実のところこの短編小説のプロットとロジックは、連続殺人事件にも使える。
いやむしろ、本来これは3重殺人事件の内容です。これをあえて「日常の謎」でやった北村の力技に、再読して初めて気づきました。

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コメント

No title

「夜の蝉」は  本好きの主人公「私」と名探偵 円紫師匠シリーズ。 大ヒット、まではいかないかもしれませんが、中ヒットした。

 普通、こんだけ売れると出版社から「どんどん描いてください」となる。ところがそこで問題が生じる。「登場人物の時系列」です。

 コナンとかは歳をとらない。10年経っても小学生は小学生 高校生は高校生のまま。このパターンの探偵は多い。永遠に続けられる。

 しかし、登場人物の時系列をきちんと追ってストーリーを作ると主人公は歳をとる。時間は元に戻せない。

(ちなみにパトリシアコーンウエルの検視官シリーズみたいに、いきなり主人公が10歳若返って 死んだ恋人も生き返るという、「商魂たくましい」シリーズもある。温厚なオラもこれには怒った。読んで即 文庫本をゴミ箱に入れた)

 何が言いたいかというと、 北村さんは「冷酷に」主人公に歳をとらせてしまう(涙 涙)。 可憐な女子大生だった主人公に、歳をとるならまだしも「結婚」なんぞさせてしまう(涙 涙 涙)

 北村さんの美学、でしょうけど。 普通、主人公に 恋愛ならまだしも「結婚」させるか???

 オラのアイドル 「私」が結婚してしまった・・・え〜ん え〜ん

名探偵型ハードボイルド女探偵

俺のアイドル葉村晶(by若竹七海)はまだ結婚していない。
(結婚できるもんか、あんな女)

No title

>俺のアイドル葉村晶

 名前は知っていました。
 が、未読でした。

で、JGさんのアイドルってどんなに魅力的なんだろう? と 読んでみました。

 「さよならの手口」

 あまりに多くの人が失踪しているので、「これ全部 一人の犯行?まさか」 と思ったり、政治家が出てくるので「おや? もしや巨悪に挑むのか?」と思ったり・・
 
 いや見事なもんです。楽しめた。

 若竹七海さんってこんな上手でしたっけ。
昔 何作か読んだことがあったのですが、それほど印象には残っていなかった。(失礼しました。)

 この探偵は魅力的ですね。
 キザでクールでタフな探偵は本家のフィリップ マーロウを筆頭に日本にもたくさんいますが、
 庶民的で運が悪くてすぐカッとなって世の中に悪態をつきまくって有能な女性探偵は日本にはなかなかいない。

 しかしこの長編、才能を削るような小説で、こんな密度で文章を書いていたらそりゃ時間かかりますよね。読者はありがたく読まないと作者に申し訳ない。見事なレトリックです。

葉村晶という女

葉村晶に関しては、3年前に某教育系掲示板で書いた文章を再掲。

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今宵は女探偵について、しばしお喋りを。
女探偵といえば、このスレッドでも以前話題に出して、コーデリア・グレイを紹介しましたが、今日のヒロインは国産女探偵、葉村晶。属性はハードボイルド。作者は若竹七海。

行動派であるが天才型でもあるこの女探偵は、トラブルを次から次へと引き込んでしまう厄介型探偵でもある。
代表作は…たった4冊しかないのでどれでもどうぞ、だ。短編も長編も巧緻なプロットで、ちょっと息苦しくなるほどだ。こんな勿体ない書き方をしてるから、いまひとつ売れないんだぞ、と叱りたくなるくらい。

ちなみに俺が一番好きなのは、短編集『暗い越流』に入っている「蠅男」の話。謎の設定が奇怪で、島田荘司を彷彿とさせる。
最新作の『さよならの手口』は「2016このミステリーがすごい!」4位、「2016本格ミステリ・ベスト10」18位。この小説はミステリの内容もさることながら、ラストシーンが感慨深い。葉村晶の心の奥深いところで蠢く黒い靄が、とんでもない方向から差込んだ一筋の光で霧消する。その光を投げた当人がとぼけていればとぼけているほど、その効果は神々しい。

ちなみに葉村晶は、実際の時間と同じように年をとるらしい。20代で登場した彼女も、もう40を遥かに越えた。
登場からずっと読んでいるんだから、俺も歳をとるはずだぜ。(シミジミ

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ジャーナル・ギャップ

Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

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