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明訓高校、かく敗れり

先月、漫画『ドカベン』が終了した。
物心ついたころから連載していた長寿漫画だが、最初は柔道漫画だったことを知る人は少ない。
一説によると、水島新司は野球漫画としてオーダーを受けたものの、ほぼ同時期に掲載誌「週刊少年チャンピオン」で野球漫画の連載が始まったので、まずは別のストーリで進むしかなくなった、らしい。
ホントかな?
社内のつながりが強くなった今ならあり得ない話だが、当時の漫画誌の編集者は一人一人プライドが高く、自分で漫画家を何人も囲って育てていて、何を連載させるか社内でもギリギリまで隠していた面があるので、一概には否定できない話だ。
特に「週刊少年チャンピオン」には壁村さんがいたしなあ。…

さて『ドカベン』の話だ。
俺にとって『ドカベン』はいろいろあって、うまく括れない漫画だが、ひとつ言うなら、「敗北することの美しさ」を教えてくれた漫画でもある。
こうした美しさを教えてくれる漫画は少ない。当然だ。
漫画において主人公は常に「正義」「勝利」のサイドにいる。
仮に敗北があったとしても、それは勝利を前提とした敗北になることが多い。
野球を例にとれば、3三振を喫していても4打席目で勝利のホームランを打つ、大量リードされているも最後に逆転する、その試合を落としても次の大会で雪辱する。
しかし『ドカベン』の敗北は、完璧な敗北であり、その後の逆転はない。
主人公・山田太郎は2本のホームランを打つが、最後は執念のディフェンスも実らず、サヨナラ負けに沈む。

当時のことを思い出してみる。

山田太郎、2年の夏の甲子園は、神奈川県大会決勝戦で難攻不落の大エース・土門を擁する横浜学院と戦う。
この土門、そして好捕手・谷津にあとワンストライクまで追い詰められるが、明訓のホットドッグ・岩鬼のサヨナラホームランで甲子園をもぎ取る。
この試合から、球場外で少しづつ登場してくるのが、後に明訓を倒す弁慶高校(岩手代表)の主砲・武蔵坊数馬とエース・義経光の二人だ。

弁慶高校は明訓を倒す前に、明訓のライバル・土佐丸高校(高知)を破っている。
当時の土佐丸は、打の犬飼武蔵、投の犬神了とタレントをそろえていたが、2打席を撒き餌にして3打席目で犬神から武蔵坊がホームランを打った瞬間、俺は「週刊少年チャンピオン」を抱えながら、「あ、水島は明訓を負けさせようとしている!」と直感した。
しかし当時は主人公が負ける漫画などそうそうなく(『あしたのジョー』くらいか?)、俺は不吉な予感に襲われながらも、どこかで楽観していた。
なあに、最後は勝つさ。

義経の「初球はど真ん中ストレート」発言を受けて、明訓・土井垣監督は一番・山田、四番・岩鬼の奇策を実行する。
山田は義経の予告ストレートをホームランするが、以後この打順が明訓を苦しめる(土井垣の間抜けめ!)。

武蔵坊の敬遠球ホームランで逆転されたのち、土壇場9回の表に明訓は山田の2本目のホームランで同点に追いつく。
そして9回裏、ショート石毛の送球を武蔵坊が額で受け、転がった球を殿馬がバックホームするも義経の八艘跳びに山田の背面タッチがおいつかず、明訓は連載中唯一の敗北を喫する。

そんなのありかよ!
という気持ちと
水島、やりやがったな!
という気持ち。

その時はやはり怒りの気持ちが強かったが、この敗北の美しさは、俺の成長の中で輝きを増していく。

未完成で終わることによって、これ以上なく完成されるものがある。(『人間臨終図巻』山田風太郎)

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コメント

ドガベン

 最初の方にはなんか「お札(500円札だったか?)に名前を書く」みたいな話があったように記憶しています。
 
 どのスポーツの漫画もそうですが、初期の頃は「魔球もの」 奇想天外な話が出てくる(巨人の星 侍ジャイアンツ)。消える魔球って奴ですニャ。
 しかし次第に読者も書き手も成長してくると本格スポーツ漫画が出てくる。多少魔球っぽいものがあっても「芯」の所は正確に描写する。プレーヤーの心理も実際に即したような描写になる。
 やっぱりドガベンはそういう漫画でしょうか。みんなドガベンを見て、その知識でプロ野球をみてわかったつもりになれた。

 関係ないけど、本格スポーツ漫画って・・他には エースを狙え(テニス) 愛のアランフェス(フィギュアスケート) スラムダンク(バスケ) 風の大地(ゴルフ) 諸々・・

 ドガベンも「本格」と「魔球」の間で揺れ動くような感じもした。 私は「魔球」っぽくなって読まなくなったような記憶がある。(単に興味の問題かも)

 だから負けたのは知りませんでした。

※ドガベン知識って、広く国民に浸透していて都市伝説化したものもありそう。(本当は違う 知識)。 野球も結構「都市伝説」の多いスポーツだ。
 例えば・・
 いいコースに投げると野手の正面に飛ぶ(本当かいな?)
 ファウルが真後ろに飛ぶのはタイミングがあっている。(これは本当なの?)
 もっといい例がありそうだけど 思いつかない。

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ジャーナル・ギャップ

Author:ジャーナル・ギャップ
酒と野球とミステリーをこよなく愛するが、なんの因果か中学受験についていろいろ書いていくことに。

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